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誰もが安心して学生生活を過ごせる
オールジェンダートイレ(仮称)とは?

性別にかかわらず利用できるオールジェンダートイレが、アメリカやヨーロッパを中心に日本でも広がりつつあります。龍谷大学では2018年から多機能トイレを「だれでもトイレ」と名称変更するなど、誰もが安心して利用できるトイレの実現をめざし、さらなる進化に向けて検討を重ねています。今回は、深草キャンパス内に設置予定のオールジェンダートイレ(仮称)事業に関わった「Clear」のメンバー4人に話を伺いました。

“男”or“女”に分けられる
生きづらい場面を減らすために

「Clear」として活動してきた柏木文乃さん、江口美桜さん、長崎まなみさん、牧村美優さんは、4人とも政策学部の3回生。LGBTQを含む多様な性を持つ人々が生活しやすい、キャンパスづくりについて考えていく中で、トイレ調査を開始。その行動がオールジェンダートイレ(仮称)新設につながるきっかけだったそうです。

「チームとして活動を始める前、政策学部の30名ほどが参加するプログラムの中でトランスジェンダーの方から、直接お話を聞く機会がありました。そのお話の中に、男性か女性か、2つの性別で分けられてしまう場面で生きづらさを感じるという内容があり、その場面のひとつとしてトイレというワードも出ていたんですね。そこから、性の多様性というテーマの中でも、誰もが日常的に必要とするトイレに着目してみようということになったんです」と牧村さん。

「学内のトイレ調査、学生に向けたアンケート調査を続けていく中で、性の多様性に関する課題解決は、ハード面を変えていくべきフェーズにあると感じました。そこから、2021年12月には入澤学長に提言書を提出させていただき、2022年6月からは『龍谷チャレンジ』の採択を受けて会議や見学など活動を開始。龍谷大学の管理課の方々と協働で、2025年度に竣工予定の新校舎にオールジェンダートイレ(仮称)を設置する構想が進んでいきました」と語るのは、江口さん。

多様なニーズに対応する
オールジェンダートイレを視察

多機能トイレから名称が変わり、2018年からキャンパス内で見かけるようになった「だれでもトイレ」。しかし、学生210人から返答をもらったアンケート調査では「多機能トイレと、だれでもトイレとの違いがよくわからない」という意見が多くあったそうです。また「だれでもトイレ」にはオールジェンダートイレの要素があるとわかっていても、実際には使いづらいという声も。男性トイレと女性トイレの間に「だれでもトイレ」がある場合、なぜあえてそこを選んだのかと好奇の目で見られる気がして入りづらい、そんなリアルな声も届いたそうです。様々なニーズに対応できるトイレとは、どんなトイレなのか。めざしたいトイレの方向性を定めていくために、「Clear」メンバーはキャンパスを飛び出し、東京での視察を行いました。先進的なトイレを導入している、国際基督教大学、東京ポートシティ竹芝、リクシル本社を見学。ひとくくりにオールジェンダートイレといっても三者三様、それぞれにメリットやデメリット、個性があったそうです。

「入口はひとつで、ひとつの空間の中に誰でも使える個室がたくさん並んでいるもの。ひとつの空間の中に男性用と女性用、そして誰でも使えるオールジェンダートイレが混在しているもの。男性用と女性用の区別はないけれど、動線の工夫がされているので他人と顔を合わせる不安がなく、オールジェンダートイレを使用できるもの。いろんなスタイルを見比べるうちに、私たちがめざす方向が固まっていきました。」と長崎さん。

実際にいろんな空間や工夫を見て、いろんな人の意見を聞いて、「Clear」が辿りついたのは、LGBTQを含む多様な性を持つ人だけでなく、シスジェンダー(※)も、障がいのある方も、誰もが快適に過ごせる場づくりでした。
※出生時に割り当てられた性別と自認する性別が一致し、それに従って生きる人

「現段階の完成予定図に描かれているのは、ゆったりスペースを確保した誰でも使える個室が並んでいて、車椅子に乗ったまま入れる多機能トイレと、着替え台が設置されている広めのトイレが一つずつ混在している空間です。マイノリティの方だけでなく、例えば性自認が女性でこれまで女性用トイレを使ってきたような女性でも気軽に使いたくなるよう配慮しました。着替え台付きトイレはその配慮のひとつです。また個室にそれぞれ手洗い台をつけることも計画していて、個室を出た後に手洗い場で誰かと顔を合わせることなく、個室の中ですべてをすませてスムーズに外に出ていける。誰にとっても使いやすいトイレに近づいていると思います」と牧村さん。

誰もが使いやすいトイレの周知が
誰もが幸せな社会につながるよう

「Clear」のメンバーとして活動し、性の多様性に関する知見を深めてきた4人。誰にとっても使いやすいトイレについて学内外の人々と意見交換するうちと、新しい気づきも多く得たそうです。

「ハード面を変えた先に求められるのは、本当の意味で人の心が変わっていくことです。LGBTQを理解する人=アライ(ALLY)という言葉があり、アライであることを表明するマークやステッカーが存在します。龍谷大学でもそういうマークを活用し、共感する理解者を増やし、新しい校舎ができた時に積極的にオールジェンダートイレを使う人が増えて欲しいなと思っています。また、性自認についてオープンにしたい人も、オープンにしたくない人もいる世界で、それぞれがどうしたいのか、それぞれの意思を大事にできるように。トイレを入口にいろんな選択肢が増え、全員が幸せになれる社会になっていくことを望んでいます」と江口さん。

「龍谷大学にオールジェンダートイレがなぜ設置されたのか、という目的に気づいてもらうために、まだまだやるべきことはある気がしていて。ただハード面を整備して終わりではなく、多様な性を持つ人が生活しやすい学校環境という目的意識を、広めていくことが大切だなと考えています。今後もSNSでの発信など広報活動をしていきたいと考えています」と牧村さん。

長崎さんは、大学のトイレを考えていく中で、大学生になるまでの環境整備についても考えるようになったそうです。「計画を進めていく中で耳にしたのが、小学校の男子トイレは入りづらかったという声でした。改めて周囲に聞くと、やはり男子トイレですごく嫌な思いをしたことがある人もいて。私たちより下の世代で苦しい思いをしている人たちのために、何を変えていくべきなのか、考えるようになりました」

柏木さんも同様に「これから入学してくる未来の龍谷大学生にも、どんどん活動の輪をつなげていけるように。小学校、中学校、高校でも話し合える場づくりをして、幼いころから、周りに言いにくいことではないと思える教養をつけることが必要だと思います。年齢も性別も関係なく、誰もが生きやすい時代になっていくことを願っています」