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廃棄衣料を使ったブロックで家具づくり
環境保護への一歩を踏み出す

みなさんは、アパレル企業で生産された衣服のうち、約6割が売られずに処分されていることをご存知でしょうか。SDGsの目標達成が叫ばれている今、余剰・廃棄衣料のアップサイクルに取り組んでいるのが、龍谷大学生を中心とした学生5名によるチーム「京結える(きょうゆえる)」です。

「京結える」代表の藤田 政広さん(経営学部)

龍谷大学「プレゼン龍(ドラゴン)」で最優秀賞を受賞

龍谷大学が学生発ベンチャーの発掘・育成を目的に開催しているビジネスプランコンテスト「プレゼン龍(ドラゴン)」。2021年は社会課題を解決するためのビジネスプランを募集しました。12月25日に行われた本戦で、「京結える(きょうゆえる)」は「廃棄衣料を用いたブロックで家具等の開発と販売」を発表。新しい価値・デザインの創造と衣料をブロックにする技術が評価され、最優秀賞に輝きました。
さらに、龍谷大学代表として2022年2月22日に神戸で開催された、関西12大学のイノベーションプランコンテスト「KANSAI STUDENTS PITCH Grand Prix 2022」では優秀賞を獲得しました。

江戸時代の技術を応用しブロックを開発

20回以上も試作を繰り返しました

ブロックは、衣料を細断し、こんにゃく糊などと合わせて型に流し込み、3~4日乾燥させて完成します。衣料の色がそのままブロックの色となり、タグが見え隠れしているのもおしゃれです。
「子どもの頃、よく紙で色々な物を作って遊んでいました。紙を水で溶かして固いボールができたことを思い出し、ブロックを作るアイデアをに応用しました。レジンや紙粘土などで試作を繰り返し、最終的に採用したのは食用のこんにゃく粉に水やパルプなどを合わせる方法でした。これは江戸時代、和紙傘の防水加工として使われていた技術で、京都伝統工芸大学の方に教えてもらいました」。
ブロックを発案したのが2021年5月、9月から開発をスタート。こんにゃく糊の存在を知ったのが10月です。12月の「プレゼン龍(ドラゴン)」本戦まで、試作を重ねる日々でした。

廃棄野菜での紙づくりなど自然保護活動も

廃棄野菜の和紙を利用した「逆マタニティストラップ」

『京結える』は、龍谷大学の学生活動支援制度『龍谷チャレンジ』を機に2020年11月に設立した学生団体です。コンセプトは“日常に彩りの循環を”。これまでに、自然保護などのボランティア活動、廃棄野菜で紙づくり、妊婦さんに席を譲る意思を示す『逆マタニティストラップ』製作のワークショップなどを手掛けてきました。チーム名『京結える』は「今日結える、明日歩む」という意味があるそうです。人との縁を結び、明日に向けて新たな一歩を踏み出そうという想いが込められています。

「大好きな自然を守りたい」と藤田さん

「私は自然が大好きです。鴨川を散歩している時、毎日新しいゴミが増えているのに驚きました。ゴミ拾いにも意義はありますが、そもそもゴミを減らさないと根本的な解決には至らないと気づきました。ゴミなどの環境問題について調べていくうち、廃棄衣料問題を知りました。現在、アパレル業界は大量生産・大量廃棄を繰り返しています。日本では、衣料品の6割、約140万トンが売られることなく残ります。そのうちリサイクルされるのはわずか2割。8割は焼却または埋め立てされているのです。そこで、廃棄衣料を有効活用できる方法として、ブロックで家具を作るというアイデアを思いつきました」。

企業や学生団体とのコラボを進行中

「京結える」のブロックは、早くも各方面からコラボレーションのお誘いが舞い込んできています。着物の技術をデニムに活かした企業「京都デニム」とはクラウドファンディング、立命館大学生を中心とする学生団体「Lápiz Private」とはアートと掛け合わせたコラボレーションを計画しています。

現在の課題は、まずはPL法です。家具を販売するには、製品の強度、防水、耐熱温度などが定められたPL法をクリアする必要があるからです。これについては、龍谷大学瀬田キャンパスにある強度測定機で計測を予定しているそうです。また、特許の取得に向けても準備を進めています。

「まずは家具以外の製品から始めていきます。強度などの課題がクリアでき次第、家具や内装資材に取り組んでいきます。私たちが家具にこだわるのは、みんなが日常で目にするもので、かつ長く使うことができるからです。最初の一歩は、少しでも多くの住民や企業が、アップサイクルされた家具を目にすることで、大量生産・大量消費の実態を自分ごととして捉えられるようになることです。これが広がると、社会課題・行政課題として認知されていくでしょう。私たちのブロックが、環境保護の意識を高める一歩になればうれしいです」。