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龍谷大学とDaigasエナジー株式会社が目指す 「カーボンニュートラル社会」に向け一歩前へ

龍谷大学は、2022年1月27 日に「カーボンニュートラル宣言」を発出し、2039年までの「ゼロカーボンユニバーシティ」の実現に向け、さまざまな取り組みを実施しています。2023年度内には消費電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指しており、2023年2月24日、大阪ガス株式会社の 100%子会社であるDaigasエナジー株式会社と包括連携協定を締結しました。

協定による具体的な取り組みとして、すでに深草キャンパス・大宮キャンパスで使用する電力については大阪ガスが再生可能エネルギー100%の電気「D-Green」を供給しており、これに加え、再生可能エネルギー電気特定卸供給(※1)の仕組みを活用します。具体的には龍谷大学が参画する地域貢献型メガソーラー発電事業「龍谷ソーラーパーク」(※2)で発電した電力を大阪ガスが深草キャンパスに供給すれば、大学全体の約89%が再生可能エネルギーによるものとなります。
また、「龍谷ソーラーパーク」自体も拡大し、環境省の脱炭素先行地域に選定された京都市伏見エリアの脱炭素化へも貢献していきます。
この度、より強いパートナーシップを築いてくこととなった龍谷大学の入澤崇学長と、Daigasエナジー株式会社代表取締役社長の井上雅之氏に、「ゼロカーボンユニバーシティ」への期待感を伺いました。

※1 発電者を特定した再生可能エネルギー電気を、事前に小売電気事業者と発電者との間で卸供給することについて承諾し、送配電事業者から当該小売電気事業者に対して、送配電事業者の送配電ネットワークを介して卸供給すること。

※2 全国初の地域貢献型メガソーラー発電事業。事業会社と金融機関などが連携し、龍谷大学が社会的責任投資(SRI)として投資する資金等をもとにメガソーラー発電所を各自治体所有地等に設置し、固定価格買取制度を利用して売電事業を行うもの。利益は、パネル設置地域や京都の地域貢献活動や市民活動の支援資金として提供されると共に、龍谷大学に社会貢献活動資金として寄付され、社会連携を推進する資金として活用。

龍谷大学が掲げる「ゼロカーボンユニバーシティ」の概念を、お教えください。

入澤:2015年に「誰一人取り残さない」という理念のもと国連加盟193カ国すべてが合意した、世界共通目標=SDGs。本学ではSDGsと仏教と接続させた「仏教SGDs」を提唱しています。SDGs で記された17の目標を達成するためには、人間の意識と行動を変える必要があり、そこに地球の問題、社会の問題、個人の問題をつなげていける仏教が、大きな役割を果たせると考えています。脱炭素の問題も自分ごととして捉え、自分に何ができるのか、自分の組織で何ができるのか。新たな発想を引き出す時期にきています。本当に驚くほど、若い人の意識が変わってきていると感じます。2021年から継続している龍谷大学学生気候会議においても、さまざまな学部の学生から意見が飛び交い、大人たちが解決できなかったことを、自分たちで変えたいという意識を強く持っているのだと実感しました。まず、キャンパスで脱炭素について考える力を身につけ、社会でその力を応用し、組織や企業での活動を通して地域に貢献するという思考、行動を持った人材を育成できる教育機関でありたい、という強い思いを持っています。Daigasエナジーさんとの連携によって、学生の意識と行動の変化が加速することに強い期待を抱いております。

井上:龍谷大学様の志の高い試みと、Daigasエナジーが目指す先に親和性があると感じてくださっていることを光栄に思います。カーボンニュートラルに関係する私どもの業務は、これまで省エネルギー設備を導入するといったハードの面が中心でした。しかし、これからは省エネの意識を持った人材を育成するという、ソフトの面でも何かの役割を果たせればと思います。

連携事項の中にある、各キャンパスの再整備計画における環境を考慮したエネルギーシステムについて、簡単にご説明ください。

井上:再整備計画の軸となるカーボンニュートラルは、国全体、あるいは世界全体で取り組む息の長い取り組みですけれど、無駄なエネルギーを使わない省エネルギーはその取り組みの一丁目一番地だと思います。これまでも3箇所のキャンパスにおける省エネルギーに取り組んでこられましたが、我々の知見を駆使してさらに省エネルギーできることはないか、ということを追求していきます。できることのひとつとして、エネルギーを可視化した上で、最適なエネルギーマネジメントを実施することが大事だと思います。可視化した上でガスのシステムについて高効率なものを再検討するとか、電気は再生可能エネルギーを使うであるとか。総合的にミックスしたご提案をしていきます。

いずれは、学生たちの目にもエネルギーの動きが見えるようになるのでしょうか?

井上:私どものソリューションの中に、エネルギーを可視化するシステムもございます。いくつかの企業様では、すでにエントランスに本日の電力量、発電量などが見えるパネルを設置させていただいています。これらをキャンパスにも導入し、エネルギーの使い方が見えるようになれば意識が変わり、さらに行動の変化につなげていけるかもしれませんね。

連携事項の中には“学生向けのキャリア教育、グリーン人材育成” “産学が連携した共同研究”といったワードが含まれていますが。

入澤: Daigasエナジーさんと連携し、エネルギーに関わる生の情報が教育現場にもたらされることで、教育の質を上げていくことができると思います。これまでの大学教育というのは、専門教育、教養教育の二本立てでした。どちらかというと知識を得るというものだった。ところが今、必要とされるのは、価値創造型の教育です。自分がどのような価値を創造できるのかについて考えられる人間を育成するという流れがあると思います。学生からのニーズとしても、社会の仕組み、企業の実態を知りたい、という声はかなり多い。教室だけにとどまらず、企業との連携を通して社会に目を見開き、この社会には単独でなりたつ仕事などないのだ、ということを知るよい機会になると思います。

Daigasエナジー様という企業が、社会にもたらす価値とは。

井上:カーボンニュートラルの観点では、ゼロカーボンに向かっていく、ということになるのですが、Daigasエナジー、あるいは大阪ガスグループは、まさに価値創造の経営を掲げております。お客様価値、従業員価値、株主価値、社会価値、この4つの価値を最大化していくことを目指しています。ひとくくりに価値と言いましても、時代によって意味合いも変化しています。ひと昔前ですと、株主価値といえば株価をあげること、お客様価値といえばたくさんのエネルギーをたくさんお届けすること、という利益重視の発想でした。けれど脱炭素の流れができてからは、株主様は環境保全に関わる活動をしていない企業の株は持たなくなる傾向にありますし、従業員は自分たちの商材が環境価値を踏まえたものでないと、働きがいを感じないと語ります。脱炭素につながる4つの価値を追求することが、人も企業も社会もハッピーな世界につながっていくはず。新しい価値を先行してお届けしていきたいと考えています。

カーボンニュートラルの実現に向け、周知すべきことはありますか。

井上:私どもも、再生可能エネルギーを最大限、活用するよう取り組んでいきますが、実は日本のエネルギー事情を考えた時、すべてを再生可能エネルギーの電力でまかなうというのは、非効率でもあるのです。さらに、急速で過度なコストアップにつながってしまうと、企業の国際競争力の面でも苦しい状況になります。私どもが2050年に向けてすべきは、リアリティのあるシステムを模索しながら進むことです。消費者の生活や企業の活動に、大きなクラッシュが起きてしまわないよう、トランジション(移行)期間を経ること。つまり、低炭素の時期を経て、脱炭素を成し遂げる方がリアルだと考えます。私どもがお送りしている都市ガスは化石燃料を使用していますけれども、現在、e-methane(イーメタン)、もしくはメタネーションと呼ばれる技術開発を懸命に進めております。これは、排出されたCO2を吸収し、水素と反応させて都市ガスの主成分であるメタンを生成する技術です。こういう先進的な取り組みを含め、まずは低炭素につながるご提案をしていきたいと思います。

2023年を生きる若者に向けて、メッセージをいただけますか。

入澤:奇しくも包括連携協定の締結を行なった本日(2023年2月24日)は、ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経過した日です。21世紀にまだ、このような無惨な戦争が行われているわけです。しかしこの戦争を掘り下げてみると、背後に資源の獲得競争の問題やエネルギー問題があります。エネルギーに関しては、現代を生きる我々が本気で向き合わないといけない問題なのだと思います。本日の協定締結は世界的なレベルで見れば小さな一歩です。でもこれから私たちがやろうとすることが、キャンパス中に広がり、いずれ社会に波及して、さらに世界的に広がる可能性も十分にあります。本当に小さなアクションですが、これが大きな社会変革につながりうる可能性を感じています。

井上:龍谷大学に通う学生のみなさまは、環境リテラシーがとても高くていらっしゃいます。食物残渣をバイオマス活用して再生可能エネルギーにするという技術がありますが、有効活用するには食物の分別が必須条件となります。昨今の学生さんはゴミの分別はもちろん、自然由来の商品を選ぶなど、高いモラル、リテラシーをすでにお持ちですので、今後、再生可能エネルギーの世界レベルも上がっていくでしょう。古い世代の人たちより、キャンパスで活躍されている現役の学生さんのモラルとリテラシーが将来の社会を牽引してほしい、若者が牽引する再エネ社会になればいいなと思っています。

本記事は、2023年2月24日時点の内容となっています。
龍谷大学では、2023年6月から3キャンパスすべての使用電力が100%再生可能エネルギーとなりました。
龍谷大学3キャンパスで使用するすべての電力が再生可能エネルギー100%へ(2023年6月22日付プレスリリース)