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コロナ禍の困難に直面している学生たちの声から、学生、教職員、学生の人生を応援したい事業所等、みんなの協働によるこれからの学生支援について考える「第4回共生のキャンパスづくりシンポジウム」レポート

2021年12月22日、龍谷大学学生・教職員共生のキャンパスづくり実行委員会の主催で「第4回共生のキャンパスづくりシンポジウム」が開かれました。本シンポジウムは、毎年1回開催され、主に心身機能の障がいから「共生のキャンパスづくり」について考えてきました。

今回の開催は、コロナ禍で様々な活動や社会参加が制限され、心身の不調を訴える学生の現状報告を出発点に、学生、教職員、学生の人生を応援したい事業所等、みんなの協働による学生支援全体について考える機会といたしました。

大学でも、コロナ禍での不調に関わる学生の相談が増加しており、これはWHO(世界保健機関)が2001年に提唱する「国際生活機能分類(ICF)」における「活動」や「参加」が制限され、全ての学生が心身に様々な影響を受けている(注)状況と言えることから、重大な社会問題であるとして、当会でも多様な意見が交わされました。
(注)「障がい学生支援」は、「国際生活機能分類(ICF)」を採用している「障害者の権利に関する条約」の精神を具現化するものであり、「心身機能や身体構造」に限定せず、「活動」や「参加」を合わせた3つの生活機能と、生活機能へ影響を与える「環境因子」と「個人因子」、それら全体を捉えて推進すべきものと考えています。

コロナ禍における学生たちの経験や思い

シンポジウムの開会にあたり、入澤崇学長があいさつ。SDGsが目指す貧困の解消や若者の貧困問題、龍谷大学が掲げる基本構想400について触れつつ「私たちは他者とのつながりの中、関係性の中で生きている。コロナ禍の現在であってもどうか自分の内に閉じこもらないでほしい」と話しました。

続いて、本シンポジウムの運営に携わる学生実行委員長の西田麻穂さん(政策学部)が「私自身は大学の先生や先輩方のおかげで、ニュースで報道されていた程の辛さはなかったのですが、オンラインでつながっていても、直接ふれあうことが制限される日々の中で、一人暮らしの寂しさを感じることがありました。コロナ禍であってもなくても、学生の困り具合は様々。コロナを通じて見えてきた発見や課題が、今後の学びにつながるシンポジウムになれば」と述べました。

あいさつをする学生実行委員長の西田麻穂さん(政策学部)

シンポジウムは、学生実行委員の谷口未久里さん(国際学部)の司会で進められました。

進行する谷口未久里さん(国際学部)

前半はコロナ禍で困難に直面した学生たちの話題提供と「学生たちが考える学生支援ビジョン」をもとに意見交換が行われました。ここでは、学生たちがコロナ禍で直面した課題や取組についてご紹介します。

経営学部卒業生 河合祐樹さん

コロナ禍で在宅生活が長引くなか、自宅でノートPCを開いては閉じることを繰り返す鬱々とした気持ちをショートムービー『理由』で表現した河合さん。外出することもままならず自身の体調も崩し、4回生の前期はわずか2単位しか取得できなかったそうです。

ショートムービーを制作した理由を「自分は学生という立場で、コロナ禍における大学の在り方を根本から変えるには時間がかかります。そこでコロナ禍で苦しんでいる一つの大学生の事例として、『理由』がなければ外出できない困難をまず知ってもらえば課題解決につながるのではないか」と話し、「この映像をきっかけに、大学はもちろん、学生同士や職員同士の話題になればうれしい」とまとめました。

文学部 太田雄斗さん

「入学直後の4月下旬からほとんどの授業がオンラインになり外出の機会も極端に減った」と語る太田さん。できる限り外出しようと心がけ、オンライン授業は大学の図書館で受けていたものの、次第に孤独感を感じるようになったそうです。そんな時に巡り会ったのが100円でバランスの取れた食事を味わえる「百縁夕食」と日用品や相談リーフレットの配布などを行う「百のご縁コーナー」。太田さんはボランティアにも参加し、日用品の配布を行いました。「たくさんの学生が受け取りに来て、生協さんが準備した品が3時間もしないうちになくなったのは驚きました」と話す太田さん。手渡しをした際、多くの学生さんに「ありがとうございます」と言ってもらえたことに、人と人のつながりが生む温かみを感じたそうです。

政策学部 松本愛さん

自宅から通学する立場からのコロナ禍における苦労を語った松本さん。課外活動をしたいために龍谷大学を選んだものの活動を制限される状況が続き、長い在宅生活などのストレスも原因で体調を崩してしまったそうです。「一人でいる時間を確保したいのに、電話をすることにも家族に配慮してしまう。気軽に一人になれることができなかったことが辛かったです。対面になってからも往復3時間かけて通学することがしんどくなり、やる気が出ない日もありました。『自分が甘えているからダメなのでは』と責めるようになり、やるせない気持ちになったことも。大学には、授業を受けられなかった人へ再履修できるような配慮や授業時間外でも学生同士が議論を尽くせる環境づくりとして学内で宿泊できる場所の確保など、安心して通学できる体制づくりをしてほしいと願っています」。

文学部 冷田陸歩さん

冷田さんは、今年3月で龍谷大学を退学し、通信制大学への編入を決めたそうです。「その理由は2つあります。1つは、私は文学部に所属していますが政治への関心も高く、別の学部に編入したいと考えるようになったこと。そして、経済面も大きな理由です。僕のような理由で自主退学を選ぶ人が減ればと思い、登壇しました」

大学・大学生協も幅広い学生支援を実施

シンポジウムの後半は、コロナ禍における龍谷大学や龍谷大学生活協同組合の取組事例の紹介が行われました。

まず龍谷大学総務部総務課の野村珠美さんが、コロナ禍における龍谷大学独自の学生支援として行った「百縁夕食」の取組を報告。緊急事態宣言発出下における学生アンケートの結果から食支援の取組と学生交流機会の創出の必要性が明確になったことを受け、一人暮らしの学生を対象に栄養バランスの取れた夕食を学生負担1食100円で提供する「百縁夕食」を実施。学生への経済支援や健康支援を行うとともに、お米や日用品などの配付や授業やサークルに関する相談ブースを設けるなど様々な取組を行いました。2021年6月21日(月)~8月3日(火)の31日間で、1日約400名(深草300名・瀬田100名)、延べ1万1383名が利用。2回目に実施した12月は、保護者会(親和会)からの寄付による学生応援企画として、全キャンパス・全学生に対象を拡大するとともに、演奏会や課外活動サークルの展示イベントを同時開催し、学生交流機会の創出やサークル支援も併せて行った。

また、龍谷大学生協の谷口一宏さんは、全国大学生協連合会の取組として大学生の現状を把握するために行ったアンケートの結果を報告。そこで浮き彫りになった「暮らしの危機」「学びの危機」「コミュニティの危機」の3つの危機が起きている現状について触れ、龍谷大学生協として、感染拡大が深刻化していたGWには一人でも楽しく過ごすためのアイデアコンテストを実施。先輩からのメッセージ入りマスクの配布や「百縁夕食」では学生委員会とともに「よっとも作り企画」を行うなど、孤独防止やつながり支援の企画を行いました。他にも、食材や日用品の配布、JAやましろや深草餃子福吉さんからの食材支援など、生活応援企画も行ったとの報告がありました。「2020年度は龍谷大学生協としても経営の危機に直面したしたが、何よりも厳しい状況に陥っているのは学生組合員の方々です。組織として黒字赤字を語る前に、今こそ大学生協としての存在意義が問われていると感じています。龍谷大学も推進するSDGsの『誰一人取り残さない』という理念は、われわれ生協も同じ。今後も、福利厚生施設、インフラとしての役割を果たしていきたい」と締めくくりました。

新型コロナウイルスのパンデミックは、学生たちにとって留学やフィールドワークなど貴重な体験や経験の機会を縮小させただけでなく、対面授業の機会や学生同士の生の交流も制限しなければいけない状況となりました。シンポジウムでも人と人のつながりの重要性を再認識する発言が多く見られましたが、持続可能な開発目標であるSDGsにおいても、人と人のつながりは極めて重要と言えます。コロナ禍の今だからこそ、龍谷大学は学生たちの声に真摯に耳を傾け、「誰一人取り残さない」ための支援を継続すると共に、当事者である学生、教職員、学生を支援している事業所等みんなで知恵を出し合い、学生支援の充実に取り組んでいきます。

以 上