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学生が立ち上げたアパレルブランドが目指す、犬・猫殺処分問題の「改善」

将来の夢は「バスケットボール日本代表チームのコーチになること」。龍谷大学4回生の宮田知己さんは、その夢を追って、NBAで活躍する八村塁も在籍したアメリカ・ゴンザガ大学への留学も経験。帰国後は、龍谷大学バスケットボール部のヘッドコーチとして、18年ぶりの全国大会出場へと導きました。

そんな宮田さんは、幼い頃、もう一つの夢を思い描いていました。それは「将来、お金持ちになって山を買い、日本中の犬を保護すること」。当時の夢は笑われるほど大きく具体性に欠けるものだった。しかしその根本にある「助けたい」気持ちは変わらない。お金持ちにはまだ程遠く、笑われるほど大きな夢で実現までの道のりは長い。それでも、、今自分ができる事を精一杯やってみたい。彼は、犬・猫の殺処分問題をはじめ、社会問題への取組を目的としたアパレルブランド”BeComme(ビーコム)”を立ち上げるプロジェクトをスタートしました。どうしてアパレルブランドを立ち上げることが、社会問題の取組につながるのでしょうか。宮田さんにお話を伺いました。

編集部:”BeComme”を立ち上げる理由について教えてください。

宮田:子どもの頃、本や絵本で犬の殺処分問題に触れ、胸が締め付けられる思いがしました。自分がなんとかしなければいけない。小学生の頃から、いつか具体的なアクションを起こしたいと考えていたのです。犬・猫の殺処分問題は誰に聞いても「良くない」と答えます。とはいえ、様々な事情から殺処分そのものをゼロにすることは困難です。そこで、問題解決はできなくても、せめて「改善」ではできないか。それがこのプロジェクトを始めた理由です。ただ、犬・猫の殺処分問題に関心があった私ですら、ずっとその事ばかりを考えているわけではありません。ましてや犬・猫の殺処分問題への関心が薄い人々にとって、ボランティアに参加したり募金をしたりと、直接的な行動をすることは、とてもハードルが高いものです。だから、身近な衣料品を購入して犬・猫の殺処分問題に貢献できる仕組みができれば、より多くの人が参加できるのではないか。そう考え、”BeComme”を立ち上げました。

ブランド名の”BeComme”は、英語で「~になる」の”Be”と、フランス語で「~ように」の”Comme”をつなげ、敢えて続きを明記しないことで「全ての人がなりたい自分を想像し、未来にワクワクできるように…」という願いを込めました。

編集部:様々な衣料品のなかで、何故ソックスを販売することになったのでしょうか。

宮田:このプロジェクトを成功させるためには、より多くの人が手に取ってもらいやすいものを選ぶ必要がありました。そこで、Tシャツ等よりも価格が低く、老若男女の誰もが身につけるものを考えたら、ソックスに行き着いたのです。もしかしたら、ソックスよりも良い選択肢があったかもしれませんが、限られた時間の中で最善の決断をしたと考えています。とにかく、学生のうちに、このプロジェクトをカタチにしたい、という思いがありました。”BeComme”のソックスは、昔から「靴下のまち」として知られる奈良県広陵町の工場で生産されています。中国産やベトナム産のソックスなら1足50円以下で作ることができますし、国内産のものと品質が大きく変わるかというと大きな違いはありません。けれども、国内生産ならではの安心感や国内産のソックスの良さを知ってもらいたいという気持ちから、取引をすることになりました。

私たちの商品の主なターゲットは、高校生から大学生、社会人1~2年目の世代で、私たちと同じようにお金がありません。でも、動物の殺処分問題に関心のある人たちはきっといると思います。そうした方が気軽に参加できるように、ブラックネイビーやソフトグリーン、カーキベージュを用意しました。一方で、今回のクラウドファンディングでは、より幅広い世代に参加していただく必要があります。そこで、世代問わず使いやすいホワイトも揃えました。全4色で展開をしていく予定です。

 

編集部:実店舗での販売など、販路はどのように築いて行く予定でしょうか

宮田:3月中旬にECサイトを公開する予定です。ただ知名度を高めるのがこれからの課題なので、有名なインフルエンサーの方とコラボする予定で、既に何人かの方と契約を結んでいます。また、これは将来的な話ですが、自身がナショナルチームに関わるようになったとき、自分自身がインフルエンサーとなってソックスをより多くの人に履いてほしいと思っています。現在、プロバスケットボールチームにインターンとして関わっていますが、選手の方々に”BeComme”のソックスをシェアしてもらっています。大きな力を持っている方のお力添えも頂きながら、このソックスを広げていきたいです。

編集部:今後、スポーツソックスも開発するとお聞きしました。その特徴などを具体的に教えてください。

宮田:サッカーソックスとバスケットボールソックスを発売しようと企画中で、サッカーソックスは既にサンプルができあがっている状態です。私と一緒にこのプロジェクトを進める岡田悠利が海外でのサッカー経験があり、これはその経験を活かした彼の発案です。

サッカーソックスは、かかとやつま先部分には穴が開きやすいのですが、すねの部分に穴が開くことはほとんどありません。そこで、ソックスの上部はそのままに、破れてしまった下部だけを交換できる、合理的なサッカーソックスの製品化を目指しています。微量ではありますが、ゴミ削減にもつながるソックスです。

 

編集部:ソックスの販売等で得た収益からどのようなカタチで犬・猫の殺処分問題に対する支援を行うのでしょうか。

宮田:現在、「ペットを売らないペットショップ」を掲げている京都市山科区の「ペットライフサポーター BATON」さんや大阪府河南町に約1500㎡のドッグランを併設する「Cafe Two Two」さんなど、保護活動を行う個人や企業、団体等とパートナーシップを締結しています。こうした方々が求めるカタチで支援を行いたいと考えています。具体的には、シェルターの保護犬の食事や器具の購入資金などに当てる予定です。食事の場合は、○食分など具体的な数字をお示しできるようなカタチにしたいと思っています。また、私たちのSNSなどを通じて、犬の保護活動に携わる企業や団体に関する情報を拡散する予定です。

 

編集部:宮田さんは犬・猫の殺処分問題以外にも、「不登校生徒の問題」や「海洋汚染問題」についても取り組みたいと意欲を示されています。具体的なプランをお聞かせください。

宮田:私自身が不登校だった経験はありませんが、在学中に不登校問題について調べるなかで、必ずしも不登校の人が「学びたくない」「サボりたい」から学校に行かないわけではないということがわかりました。とはいえ、中学校まで人と多く関わらなかった生徒にとって、義務教育を終了後すぐに社会に参加することはハードルが高く、再び引きこもってしまうのが現状です。そこで、奈良県大和高田市の教育委員会と連携し、義務教育を終えた引きこもりの人や元・引きこもりだった人を対象に、支援を行う予定です。多くの問題を抱えた当事者の思いに寄り添いながら、商談や視察の同行や工場見学などの業務を通しての職業体験をしてもらうなどを予定しています。もちろん、最初はただオフィスにいて一緒にお昼ご飯を食べるだけでもいいと思っていま
す。”BeComme”が、彼・彼女たちにとっての居場所になればうれしい限りです。

環境汚染問題は、具体的にはボランティア団体等への支援。さらに、将来的には、回収した廃棄プラスティック(ペットボトル等)を原材料としたソックスを商品ラインナップに加えたいと思っています。とはいえ、現段階から支援を分配しすぎると一つひとつの支援が小さなものになってしまうので、まずは、犬・猫の殺処分問題改善や不登校生徒への支援、スポーツソックスの開発がカタチになったうえで、取り組みたいと考えています。

オーストラリアでプレイ経験のある国際学部4年岡田

編集部:”BeComme”は、どのようなメンバーが在籍されているのでしょうか。

宮田:”BeComme”は、私と岡田の2人で進めるプロジェクトです。現在は、プロジェクト全体の取りまとめなどは私が、工場の担当者の方とのやりとりやサッカーソックスの開発等は岡田が担当しています。私が発案したプロジェクトなので、まずはクラウドファンディングを成功させることが大事。プロジェクトが軌道に乗ったら、岡田にもより深く”BeComme”の運営に関わってほしいと思っています。

 

編集部:宮田さんにとって、プロジェクトを進める原動力とは、一体何でしょうか。

宮田:私、実はとてもビビりなんです。クラウドファンディングが失敗したらどうしよう。ソックスが売れなかったらどうしよう。そんな事を考えてしまいます。

殺処分|不登校etc…学生が「解決」ではなく「改善」への一歩を創るのクラウドファンディングサイト(2022年2月2日時点)

だから、最悪を想定した上で、それでも大丈夫だと判断したものしか行動に移さないのです。
クラウドファンディングを開始してから5日間で、目標金額である95万円のうち、約40万円が集まりました。残りの日数を考えると、正直厳しい状態です。でも、失敗するとはあまり思っていません。変に自信があるんです(笑)。正直にいうと、学生として胸を張ってやれるべきことをやったと思っています。このプロジェクトは、私の人生を通して変えていきたい未来です。”BeComme”という存在が、多くの方々にとって、犬・猫の殺処分問題等に関心を持つための架け橋になればと願っています。