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ボランティアを通じ、主体的に行動できる人間を育成する。「龍谷大学 ボランティア・NPO活動センター」

2021年度に20周年を迎えた「龍谷大学 ボランティア・NPO活動センター」(以下、センター)。深草キャンパスと瀬田キャンパスそれぞれに拠点があり、さらに専門職としてボランティアコーディネーターが深草・瀬田に各2名が常駐しています。また、学生スタッフが深草・瀬田でそれぞれ約50名、計100名も在籍しており、企画の立案・運営や学生からの相談に乗るなど積極的に活動しています。
今回は、センターの立ち上げに関わり、2013〜2014年度、2019〜2022年度にセンター長を務めた社会学部 現代福祉学科  筒井のり子教授にお話を伺いました。

龍谷大学に、センターが設置されている意義を教えてください。

本学センターの目的は、ボランティアを通じて思いやりや責任感を持ち、主体的に行動できる人間を育てることです。これは、龍谷大学の建学の精神、つまり浄土真宗の精神と直結しています。それは「真実を求め、真実に生き、真実を顕(あきら)かにする」人間を育成することです。親鸞聖人は、生きとし生けるものすべてを、迷いから悟りへ転換させることを求められました。真実に向かうためには、さまざまな他者に出会い、そしてさまざまな社会課題状況に出会う必要があります。

龍谷大学が創立380周年で掲げた基本コンセプト「自省利他(じせいりた)」も、また同じです。「自省利他」とは、今の自分を常に省み、他者のために尽力するという意味です。自分1人では、自己を確立することはできません。ボランティア活動に参加したり、センターのスタッフとして活動したりすると、いろんな立場の他者に出会い、自分が社会構造にどう関わっていくかを知ることができるでしょう。

大学の授業でも学外活動をすることがありますが、センターでの活動は、単位と関係なく自主性を第一としています。自分がやりたいボランティアへの取り組みで、建学の精神の実現に向かうことができるのが龍谷大学らしいと感じます。

センターはどのように運営されているのでしょうか。

教員・職員(事務、ボランティアコーディネーター)・学生の3者による運営を基本としています。特に2006年度からは、教職員によるセンター委員会だけでなく、学生スタッフも加えた3者による会議(概ね月1回)を新たに設けて、センターの運営方法や事業内容ついて話し合いをしています。

センターには、専門職であるボランティアコーディネーターが深草・瀬田でそれぞれ2名が常駐しています。商店街、NPOといった地域団体、学内の他部署、学生をつなぐ調整役です。ボランティアであれば何でも引き受けて学生にやらせるのではありません。地域から「ボランティアに参加する学生を探している」と打診があった場合、学生にとって参加する意義があるか、学生が成長できるかという点も踏まえてコーディネートを進めます。ボランティアコーディネーターは、学生の気づきを促したり、背中を押したり、別の道を示したり、時にはストッパーになったりと、学生に寄り添う存在なのです。

日本にある大学・短大のほとんどでは、学生部などがボランティアやNPOについての情報提供や相談を行っていますが、専門部署として「センター」が設置されているのは、169ヶ所(2019年7月、NPO法人ユースビジョン調べ)のみです。その中でも、本学のセンターは「専門のコーディネーターが常駐し、学外団体と対等な立場で調整を行っている」「学生スタッフの数が多い」「学生の人間成長を目的にしている」という点で、他大学とは異なる独自性があります。「人を成長させるには、自分を見つめ、アクションを起こすきっかけと後押しが必要」という信念のもと、人間教育ができる運営を行なっています。

センターの一角。学生スタッフはシフトを組み、授業の空き時間に相談対応や活動の準備などを行なっています

学生スタッフは深草・瀬田でそれぞれ約50名、計100名が在籍しています。学生たちは、どのような活動をしているのでしょうか。

まず1つめは、本学学生の相談対応です。「何かボランティア活動をしたい」「地域と関わりたい」という学生に対し、学生スタッフが相談にのっています。また、SNSでボランティア参加を呼びかけたり、活動紹介の動画を作成してYouTubeで公開したりしています。2つめは、ボランティア企画の立案と運営です。例えば災害時に学内で募金を集める、被災地の物産展を行なうなどです。2022年度はコロナ禍の影響を受けていた滋賀県の歴史あるお祭りである「大津祭」が3年ぶりに開催されました。祭りを運営するNPOと連携して曳山の曳き手ボランティアの募集を学内で展開しました。また、2023年3月27日には、近隣の児童館の小学生(約80名)と遊ぶ「龍谷キッズふれあいパーク」を企画。深草キャンパスの体育館や教室を使い、ドッジボールやスタンプラリーなどさまざまな遊びを行いました。

ボランティアリーダー養成講座を、随時開催されているとお聞きしました。内容について教えてください。

一般の学生を対象にした講座です。学生は部活やサークル、ゼミなどさまざまな団体活動のなかで、チーム運営に悩むことがあります。そのため学外の講師を招いた講演会やワークショップで、チームを円滑に運営するやり方やリーダーシップの発揮方法、意義のあるミーティングを行うコツなどを学べる内容を企画しています。さまざまなスキルを高められるとあり、毎回多くの学生が参加しています。

子どもたちと遊ぶボランティアプログラムに参加。2021年10月9日(土)、梅小路プレイパークにて

一般学生が参加できるボランティア活動には、どんなものがありますか。

市民農園での竹林整備などの環境保全活動、障がい者余暇支援、子どもたちと遊ぶプログラム、伝統文化を守る活動など、さまざまな活動があります。センターには毎年100以上のNPO/NGO、地域団体、福祉施設、文化施設などの登録があり、それらから多様なボランティア活動の情報が寄せられます。

センターでは、体験学習プログラムも行なっていますね。

国内では、2015年度から「福島スタディツアー」をほぼ毎年実施しており、地震・津波・原発事故の複合災害について地元のさまざまな立場の方からお話しを伺い、学び合う機会を作っています。それ以外に、滋賀県など各地に出向いてまちづくり、環境保全、伝統文化などについて学ぶプログラムも実施しています。海外については、コロナ禍以前は、学内の教員企画や学外のNGO企画でインドやフィリピン、台湾などへ訪問していました。コロナ禍の3年間はオンラインでのスタディツアープログラムも開催しました。

瀬田キャンパスで行われた、パラリンピックの正式種目でもある「ボッチャ」の体験会

学生へのメッセージをお願いします。

ボランティアというと、なんとなく「決められたことをやらされる」というイメージを持っている学生もいるようです。それは、小中高校時代に「ボランティア活動」と「奉仕活動」が混同されがちだったことがあるように思います。実質的に強制参加であるにもかかわらず、「ボランティア」と呼ばれていた清掃活動やイベントの手伝いなどです。
しかしボランティアの語源はラテン語のvolo(ウォロ)です。その意味は「自らすすんで行う、喜んで行動する」、すなわち「自発性」が基本です。「何かやってみたい」「人と関わりたい」「自分の好きなことを生かして活動したい」あるいは「大変な状況を見て、放っておけない」など、いろいろな最初の一歩があります。ぜひ、気軽にセンターに足を運んでいただきたいですね。さまざまな年代や立場の方々と出会ったり、地域での素敵な取り組みを知ったり、社会課題への多彩なアプローチに参加できるプログラムを数多く用意しています。きっと新たな自分を発見したり、社会との新たなつながりに気づくきっかけになると思います。