龍谷大学の学生7名による団体「NiCHiBle(ニチブル)」は、深草キャンパス近郊の生産者と連携し、規格外野菜を使ったメニューをキッチンカーで提供しています。また「NiCHiBle(ニチブル)」はユヌスソーシャルビジネスリサーチセンターのコワーキングスペース「創業支援ブース」に入居し、出店日時の調整などで支援を受けています。
今回は、代表の辻 優力さん(経営学部/3年)、副代表・料理長の高岸武美さん(国際学部/3年)、財務の藤原直樹さん(経営学部/2年)に、企画の意図や出店の経緯と感想をお聞きしました。
深草キャンパス近郊の農家さんを訪問し、規格外野菜の現状を知る
「環境問題を探る授業で規格外野菜やフードマイレージ、フードロスなどの問題を知り、解決に向けて私たち学生が何かできないかを考えました。農や食の現場での実態を知りたい、自分たちで問題解決に向けて動きたい、規格外野菜を使ったメニューを開発したいと思い、ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンターに相談したところ、学長、副学長にも意図を伝えていただき、出店の許可をもらうことができました。
農家さん探しはインターネットで行いました。深草キャンパス周辺の農家さんの連絡先を調べて電話やメールをしたところ、伏見・久御山・城陽・淀駅周辺の7農家さんから『ぜひ応援したい』と返事がありました。そのうち一軒は龍谷大学OBの農家さんで、『農の新しいかたちを一緒に見つけよう』と言っていただけました」(辻さん)
「そもそも野菜は規格の大きさや重さから外れた場合、市場を通して流通されることはないようです。その場合、ドレッシングなどの2次加工品に使われるか、もしくは廃棄されるかのどちらかになります。法人化して自社工場を持っている農家さんは2次加工ができますが、個人農家さんは流通野菜の栽培と収穫で手いっぱいで、規格外野菜に労力や時間を使うことができません。私たちは畑を訪れて規格外野菜を見せてもらったのですが、なぜ廃棄となるかわからないほど見た目がきれいなものも多くありました」(辻さん)
「夏休みに北海道のジャガイモ農家さんの畑で行われた研修に参加した際、太陽に当たって変色したジャガイモや大きくなりすぎたジャガイモは市場に流通しないことを教わりました。それらの規格外ジャガイモはでんぷんに加工されたり、肥料に生まれ変わったりしていました。しかし、京都で私たちが訪問した農家さんの畑では規格外野菜は廃棄していると聞き、もったいないなと感じました」(藤原さん)
味も量も重視。野菜不足の学生を救いたい
「実家は静岡の浜松市で、自然が豊かな地域にあります。大規模農家さんが多いのですが、人手不足、後継者不足などさまざまな課題があることを知っていました。しかし私たちが健康に生きていくためには野菜は欠かせませんし、野菜を育てる農家さんもなくてはならない存在です。私は幼稚園から高校までサッカーをしていて、食事は質や味よりも量がほしいタイプ。友人たちに聞くと、私と同じく質より量という人もいますし、服やゲームといった趣味にお金を使いたいから安くすませられればなんでもいいという人、値段が少々高くてもいいから美味しいものを食べたいという人などさまざまでした。それぞれの価値観があってよいのですが、それでもやはり、なるべく野菜はたくさん食べた方がいいと思います」(藤原さん)
「友人たちに聞いてみると、1人暮らしの男子学生の多くはカップラーメンやスパゲティをよく食べているようです。その理由は食費を抑えるためなのですが、それでは野菜が不足してしまい健康によくありません。野菜をほとんど食べないという友人の中には不健康に痩せてしまっている人、メンタルが弱ってしまっている人もいます」(高岸さん)
規格外野菜を食べることで、食品ロス問題について考えてほしい
左)クラムチャウダー丼(500円)。玉ねぎ、ニンジン、じゃがいも、ほうれん草、アサリ、ベーコンと具だくさんに仕上げた。
右)ラタトゥイユ丼(500円)。ナス、玉ねぎ、ピーマン、ニンジン、ブロッコリー、さつまいも、トマトと野菜たっぷり。ベーコンも入っている。
「冬にキッチンカーでの販売を目指し、夏休み後半から試作を繰り返しました。試作を行ったのは、深草キャンパス内の成就館にあるプロモーションスクエアというキッチンスペースです。昨年度、別のプロジェクトでパンを販売した時にはお客様の9割以上が女性でしたが、今回は男女ともに野菜をがっつり食べてほしいという思いがあり、女性が好きなクラムチャウダー丼と、男性も満足できるラタトゥイユ丼の2種類を用意しました。食材は規格外野菜がメインですが、市販の野菜も合わせています。どちらも、味にもボリュームにもこだわりました」(高岸さん)
キッチンカーは、学生向けに格安でキッチンカーを貸し出している、滋賀県栗東市の会社からレンタル。食品を製造・販売するにあたり営業許可証も取得した。
深草キャンパスでの出店第1回目は2022年12月6日。12月中に3回開催を予定していましたが、そのうち1日が雨だったため2回の開催となりました。2日ともすぐに完売。12月中旬には、滋賀県湖南市で行われた、龍谷大学生が運営しているクリスマスフェスティバルにも出店しました。
団体名「NiCHiBle(ニチブル)」は、風変わり、のけもの、マニアック、生息地という意味の「ニッチ」に、〜できるという意味の英語「BLE」とベジタブルの「ブル」を合わせた造語です。自分たちが作った料理や想いが、たくさんの人たちの“日”常に溶けこむようにという願いもあります。キャッチコピーは「今日も 京都で 野菜愛」。龍谷大学生に、京都で過ごす今日という1日を野菜を食べることで幸せに送ってほしい、という想いが込められています。
「NiCHiBle(ニチブル)」の目的は、規格外野菜を使ったメニューを食べることでフードロスなど農や食に関わる問題を自分ごととして考えてほしいということです。
「農家さんからは『子どものように大切に育てた野菜に利用価値が生まれたことも、学生のみなさんを笑顔にできたことも嬉しい』という言葉をいただきました。メニューを食べた学生からは『規格外とはいえ、ちゃんと食べられる野菜なのに驚いた』という声もありました。しかしこれまで3回の活動では、私たちの想いを伝えきれなかったかもしれません。ところで、野菜は見た目が良くないという理由で“使われない”という扱いを受けますが、人間に置き換えて考えると、外見や個性が違うことで排除されるのと同じだと思います。きっと、人と違うことで生きづらい思いをしている人もいます。春からは学生のみなさんが社会課題についても考えられるように、メンバーのみんなで案を出し合って工夫して出店したいと思います。」(辻さん)
「NiCHiBle(ニチブル)」は毎週火曜日、深草キャンパスにて出店しています。春休み明けまでは休業となりますが、4月以降、キッチンカーを見かけたらぜひ料理を食べてみて、そして 考えてみてください。