menu

みんなの仏教SDGsウェブマガジン ReTACTION|みんなの仏教SDGsウェブマガジン

SDGs EYEs:健康増進や環境貢献に取り組む保険会社

金融機関が取引先や契約者を巻き込んでSDGs(国連の持続可能な開発目標)達成に動いています。中でも筆者が注目しているのは保険会社の取り組みです。自社の事業を通じ、法人企業の二酸化炭素(CO2)削減を後押ししたり、個人の契約者が健康になったりする活動を行っています。自社が直接、CO2を減らすだけでなく、他者のSDGs達成を間接的に支援する点が、保険会社ならではです。

ビルド・バック・ベター(創造的復興)の視点でSDGsに貢献

MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は2021年8月、火災保険で企業の脱炭素化を後押しする保険商品を発売しました。一般的な火災保険は台風などで被災した際に保険金を支払うだけですが、新商品は被災建物の復旧時に「新たに二酸化炭素(CO2)排出量削減につながる設備を導入する際に必要な費用」まで保険金を支払います。例えば屋根の復旧時に太陽光発電設備を新設したり、CO2排出量が少ないバイオエタノール燃料を用いる自家発電設備を導入したりする費用を補償します。被災した建物を元通りにするのではなく、「ビルド・バック・ベター(創造的復興)」という発想で、どうせ復旧するなら環境にやさしく、SDGs達成面でも前進できる方向へと企業の背中を押す狙いがあります。

この保険は、火災保険のオプション(特約)として付けることができ、オプションだけで保険料は200万円以上と割高ですが、昨今の世界的な環境意識の高まりを受け、取引先の関心は高いようです。2社合わせて3年間で500社超への販売を目指しており、こうした保険が増えることで、日本におけるSDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」は着実に進展しそうです※1。
※1 企業火災保険向け「カーボンニュートラルサポート特約」
https://www.ms-ins.com/news/fy2021/pdf/0823_1.pdf

健康“維持”のために備える保険

生命保険会社もSDGsの活動を活発化しています。生命保険は人の命に関わる保険という性質上、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」に取り組む企業が多いです。例えば最近増えてきたのは、健康診断を受診すると、保険料を割り引く「健康診断割引特約」です。第一生命保険の場合で、健康診断を受診しただけで割引が受けられ、さらにBMI27以下、血圧130mmHG未満など診断結果が良好だった場合、「優良割引保険料」が適用され、保険料が一段と安くなります。定期的に健康診断を受けてもらうことで、契約者の健康をサポートするのが目的です※2。
※2 健康診断割引特約(第一生命保険株式会社)
https://www.dai-ichi-life.co.jp/examine/lineup/products/kenshinwari/index.html

筆者は会社員のため年に1度は会社が手配した健康診断を受けており、このような割引制度は不要ではないかと感じていましたが、保険会社の広報担当者に聞いてみると、個人事業主やフリーランスの場合、健康診断を受けない人も多いようです。あるクリニックが2021年に実施した調査によると、フリーランスは4割の人が全く健康診断を受けていないとの結果が出ています。その理由は1位「予約が面倒」、2位「費用が高い」となっており、保険料が安くなれば費用が高いという課題はいくらか解決され、受診の後押しになる気がします。

健康診断は年に1度だけですが、通年で健康をサポートする取り組みも出てきています。住友生命保険は、スマホやウエアラブル端末で歩数を把握したり、フィットネスジムにチェックインしたりするとポイントがもらえる健康増進型保険を販売しています。ポイントがたまっていくと、ブロンズ、シルバー、ゴールドとステータスが変わり、最高位のゴールドの場合で最大30%保険料が安くなります。

とはいえ、やはり運動をするのはおっくうなものです。そこで運動するモチベーションアップを狙った工夫も行っています。専用のアプリを導入し、何万歩歩くなどとアプリが提案した1週間の目標を達成すると、スターバックスのドリンクチケットがもらえる「ご褒美(特典)」を提供するというものです。特典はスターバックスに限らず、アディダスのスポーツ用品一律30%オフやホテルズドットコムのホテルのオンライン宿泊予約が最大40%オフなどもあります。自分が健康になるだけでなく、特典までもらえる一石二鳥的な取り組みで、契約者を継続的な運動に駆り立てます※3。
※3 健康増進型保険 住友生命「Vitality」
https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2018/180717.pdf

社会と個人をつなぎ、健康寿命延伸に貢献する保険会社

これまで保険は、病気になった時や死亡した時など、人々のリスク・不幸に備えることが主流でした。しかし、平均寿命が延び、介護を必要としないで自立した日常生活が送れる「健康寿命」をいかに延ばすかが社会課題となる中、保険会社もいかに幸福で健康的に過ごせるかといったウェルビーイングを重視する方向へ舵を切っています。

そして最近は自治体と連携し、住民の健康増進をサポートする保険会社の動きも盛んになっています。明治安田生命保険は今年4月に保険の営業職員の名称を「MYライフプランアドバイザー」から「MYリンクコーディネーター」に変更しました。個人のライフプランの助言だけでなく、自治体などと個人をつなぐ(リンクする)調整役になり、健康診断の受診率を高めるなど社会貢献活動に取り組むという意味があります。時代とともに保険会社は変わってきており、近年はより社会性やSDGsを意識した方向へシフトしています。

文/松本麻木乃:専門紙記者
2004年、日刊工業新聞社入社。化学、食品業界、国際を担当、2020年から不動産・住宅・建材業界担当の傍らSDGsを取材。近著に「SDGsアクション<ターゲット実践>」(共著)。

過去のSDGs EYEs記事はこちら
SDGs EYEs:企業が地方の関係人口創出に貢献 (2022.6.15)
SDGs EYEs:子ども食堂の可能性 (2022.05.25)
SDGs EYEs:コロナ禍で劇的に変化した働く場所 (2022.04.14)

tags