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SDGs EYEs:子ども食堂の可能性

先日、自分の住む東京23区内の子ども食堂をテーマにしたオンラインセミナーに参加しました。恥ずかしながら、子ども食堂は本当に切羽詰まった時にしか訪れてはいけないものだと思っていましたが、そうした食堂だけではなく、誰にも門戸を開いたオープンな食堂もあることを知りました。セミナーを通じ、子ども食堂は日本において、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を学ぶ打って付けの場所だと感じました。

拡がる子ども食堂の役割

まずゴール1「貧困をなくそう」とゴール2「飢餓をゼロに」が子ども食堂に該当します。セミナーでは、毎週日曜日に貧困世帯の子ども達を対象に無料でラーメンを提供する中華麺店をはじめ、子どもだけでなく、高齢者まで食べるものに困った人向けに弁当を配る有志のグループなどが紹介されていました。こちらは、私が以前、想像したように、本当に困った人を対象にした「クローズ型」の食堂です。中には、子どもの「個食」や「貧食」が気になるため、子どもなら誰でも参加できる「オープン型」で野菜を中心にした家庭料理をふるまうといった食堂もありました。こちらは、「貧食」や「野菜」といったキーワードから、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」に関連していると感じました。

ゴール1と2に関して言えば、単発でラーメンや弁当などを提供されたところで、貧困削減といった根本的な問題が解決される訳ではありません。しかしながら、子ども食堂の主催者側は、食堂同士の横のネットワークがあるほか、行政とも連携していることが多いです。子ども達が一度、二度と食堂を訪れることで、食堂を営む大人達に心を開き、家庭の事情を相談することで、行政などからもサポートが得やすくなるだろうと想像できました。貧困削減につながる最初の一歩が子ども食堂になりえるのです。

セミナーでは他に、食堂の場所を開示していない本当に「クローズ型」の食堂の紹介もありました。主催者のメールアドレスのみ開示し、食堂を訪れる場合は事前予約が必要になります。その食堂は、高校受験を目指す外国人の子ども達を対象に、食事の提供のみならず、受験勉強まで面倒をみる活動をされていました。こちらはゴール4「質の高い教育をみんなに」とゴール10「人や国の不平等をなくそう」につながる取り組みと言えます。

さらに子ども食堂では、野菜の栽培や収穫体験などのイベントを通じ、地域の人々のつながりをつくろうとしている食堂もありました。個人的には自分もすぐに参加できそうなため、一番興味を持ちました。こちらは就農体験を通じ、街を活性化する取り組みのため、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」につながると感じました。

最後にセミナーでは、子ども食堂の先駆けとされる大阪市西成区の「こどもの里」を取り上げたドキュメンタリー映画「さとにきたらええやん」を上映しました。こどもの里は、1977年から児童館として子ども達の居場所づくりに取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)です。映画は、家庭に事情を抱えた子ども達の成長を丁寧に描いた感動的な作品で、中には家庭内暴力に悩む子どもと親の姿もありました。こちらは、子どもの虐待撲滅も含まれるゴール16「平和と公正をすべての人に」につながるテーマです。

子ども食堂の進化と産業としての可能性

セミナーで興味を持ち、筆者はさらに子ども食堂について調べてみました。すると、最近は子ども食堂を支援する団体も設立されていました。代表例がNPO法人全国子ども食堂支援センター「むすびえ」です。むすびえは「こども食堂が全国のどこにでもあり、みんなが安心して行ける場所となるよう環境を整える」ことをミッションに掲げ、2025年には「全小学校区に1つ以上のこども食堂がある状態」を目指して活動しています。そのビジョンを見てみると、「こども食堂の支援を通じて、『誰も取りこぼさない社会をつくる』」と書かれていました。まさに地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓ったSDGsとリンクしています。
むすびえは、全国の子ども食堂の調査研究も行っており、それによると、2021年に全国に子ども食堂は6,007カ所あり、2020年に比べ1,000カ所以上、増えているそうです。正直、こんなにあったのかぁ、と驚きました※1。
※1「地域みんなの食堂」となった「こども食堂」 コロナ禍でも増え続け、6,000箇所を超える。https://musubie.org/news/4524/

そして、最近は子ども食堂をテクノロジーで支援する動きも出ています。賞味期限の近い食品を電子商取引(EC)サイトで販売するクラダシの取り組みです。同社は、慶應義塾大学SFC研究所と共同で、企業が災害対策用に保有する備蓄食品と子ども食堂をマッチングする実証実験を2022年2月に始めました。企業は全社員分の備蓄食品の「賞味期限」をどう管理すべきか頭を悩ませており、一方で子ども食堂は非営利活動のため、食料品の確保に困っています。両社をITでマッチングするのです。
具体的には、慶応大学の農産品・食品の履歴情報を蓄積する「スマートフードチェーンプラットフォーム」に企業の備蓄食品の情報を登録し、賞味期限が近づいた食品をITで管理してクラダシを通じて子ども食堂に提供します。クラダシは子ども食堂からニーズ・注文を受け付け、備蓄食品を分配します。今や子ども食堂は全国に約6,000カ所もあるため、どこに配るかを調整するにもテクノロジーの力が必要になります。
この取り組みは、まさにSDGsのゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」につながると思いました。フードロス削減にもなるためゴール12「つくる責任、つかう責任」にも当てはまります。積水ハウスと三井住友銀行が備蓄食品の提供で実証実験に協力し、まずは大阪府内で約1カ月間、実験した後、全国展開に向け歩を進めるそうです※2。
※2クラダシ、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム」において子ども食堂支援DX化に向けた実証実験を慶應義塾大学SFC研究所と共同で実施 https://corp.kuradashi.jp/news/22-02-14/

子ども食堂は、日本が世界に誇るSDGsのロールモデルとなりそうです。

文/松本麻木乃:専門紙記者
2004年、日刊工業新聞社入社。化学、食品業界、国際を担当、2020年から不動産・住宅・建材業界担当の傍らSDGsを取材。近著に「SDGsアクション<ターゲット実践>」(共著)。