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藤岡ゼミ×GOOD NATURE MARKETが産学連携 摘果りんごを使ったマドレーヌを開発・発売

経営学部の藤岡ゼミでは、「未利用資源の活用」をテーマに地域課題の解決に取り組んでいます。これまで、和歌山県のみかんの皮やぶどう山椒などを活用し、商品開発やマーケティング活動に注力してきました。2025年1月29日には、株式会社ビオスタイルが運営するブランド「GOOD NATURE MARKET」と共同開発した『日本茶に合う 摘果りんごのマドレーヌ』をリリース。青森県弘前産の摘果りんごをアップサイクルした焼き菓子の誕生秘話について、藤岡ゼミの4年生、今村朱里さんにお話を伺いました。

経営学部4年生 今村 朱里さん

摘果によって約9割のりんごが未利用に

————りんごの爽やかな風味がしっかり感じられる『日本茶に合う 摘果りんごのマドレーヌ』。まずは、青森県の摘果りんごについて教えてください。

今村:摘果とは、りんご栽培の過程で、収穫する果実を選別し、残す果実以外を摘み取る作業のことです。果実の数を減らすことで、残されたりんごがより大きく、より美味しく育ちます。りんご栽培においては、作業の約75%が摘果や葉の除去などの作業に費やされ、摘果で廃棄されるりんごは全体の約90%にも及びます。私自身、青森出身ですが、未使用で廃棄されてしまうりんごがこれほど多いことを、龍谷大学に入学するまで知りませんでした。

(左)りんごを摘果する様子 (右)両手いっぱいの摘果りんご

 

————摘果りんごって、どんな味がするのでしょう。

今村:摘果の時期などによって異なりますが、私たちが6月に訪問した際に見せていただいた摘果りんごは、500円玉ほどの大きさで、皮は黄緑色です。甘くなる前の未熟な状態で、農家の方は「渋くて食べられたものじゃない」とおっしゃっていました。摘果りんごをそのまま食べることは難しいですが、他の活用方法があるのではないかと思い、このプロジェクトが始まりました。

通常の大きさのりんごと摘果りんごの大きさの比較

 

————藤岡ゼミでは、これまでも地域課題解決に取り組んでおり、みかんやぶどう山椒を活用した商品開発がありましたが、今回りんごを選んだ理由は?

今村:以前、藤岡ゼミの先輩たちが青森県産りんごを使った「若年層向けのりんごの消費活性化」を目指し、オウンドメディアを活用した情報発信やカフェ、ポップアップストアなどを行っていたため、りんごとのつながりがありました。実は私が龍谷大学に入学するきっかけは、藤岡ゼミが紹介されていたパンフレットでりんごの活動を知ったことです。京都の大学生が、青森のりんごについて考えていることが嬉しく、私もその活動に参加したいと思いました。

先輩たちの活動の様子はこちら≫

 

摘果りんごを加工し、消費者の元へ

————2024年の産学連携プロジェクトは、どのように始まりましたか?

今村:私たちの活動は、2年生の春休みから任意で始まりましたが、正式なプロジェクトがスタートしたのは2024年の4月です。摘果りんごを使用してどんなことができるのか、最初にメンバー6名がアイデアを出し、「GOOD NATURE MARKET」に発表しました。開発する商品については、焼き菓子やドレッシングなど様々な案が出ました。非食品としては、歯磨き粉の案もありましたね。

企業様との会議の様子

その後、マドレーヌに絞り込み、メリットや市場調査、素材の仕入れ先を検討しました。夏にはメンバーで青森県に赴き、農家さんを訪問し、地域の課題も直接聞くことができました。農家さんが抱える課題の一つは後継者不足であり、マドレーヌをきっかけにりんご産業が盛り上がり、若い世代が関心を持ってくれれば、将来的に関係人口を増やせるのではないかと考えました。

プロジェクトメンバーで青森の農家さんを訪問する様子

 

————青森を何度か訪問するとなると、費用がかかりますね。

今村:青森は私の故郷ですが、他のメンバーにとっては遠方であり、費用が心配でした。そこで活用したのが「龍谷チャレンジ」という学生活動支援制度です。これに選ばれることで資金が支給され、プロジェクトを進めることができました。この支援のおかげで、青森県内の中学校での講演会も実現し、りんご産業の抱える問題や商品について地元の子ども達にシェアすることができました。

青森県内の中学校での講演会の様子

 

————そして完成した『日本茶に合う 摘果りんごのマドレーヌ』は、四条河原町の「GOOD NATURE STATION」に並んでいます。このマドレーヌの魅力について教えてください。

今村:『日本茶に合う 摘果りんごのマドレーヌ』は、「GOOD NATURE MARKET」の日本茶に合う焼き菓子シリーズに加わった新しいアイテムです。特徴的なのは、ヨーグルトやチーズの製造過程で出るホエイや、カカオ豆の皮(カカオハスク)を使用している点です。また、缶詰に詰めることで賞味期限を12ヶ月に延ばしていることがシリーズ共通の魅力です。

【画像提供】株式会社ビオスタイル

 

生地には世界初のパウダー化に成功した摘果りんごを練り込み、何度も試食を重ね、りんごの爽やかさとカカオの香りが絶妙に調和するように微調整。先にりんごの爽やかさが広がって、後からカカオがフワッと香るバランスに落ち着きました。また、パッケージデザインにも参加させていただき、「キャラクターのカカオくんに農家さんみたいな帽子をかぶせてはどうか」「摘果りんごの色をグリーンにしてほしい」といった提案を行いました。開けるまでも、開けてからも、見える場所に置きたくなる、見た目の可愛さも魅力です。

パッケージにも工夫が施されている

経験を次の代へ引き継いでいきたい

————商品が完成し発売まで至ったプロジェクトを通じて、どんな気づきがありましたか?

今村:消費者が求めるものや、そのメリットを真剣に考える貴重な機会となりました。視点を転換し、消費者目線で物事を考えることが学びでしたし、今回の経験は他の場面にも活かせると感じています。また、プロジェクトを進める中で、多くの人と出会い、将来的には食品メーカーで企画に携わりたいという気持ちが強くなったメンバーも多かったですね。

 

————これからチャレンジしたいことは?

今村:私自身、りんごに強い思い入れがありますので、このプロジェクトを継続したいと考えています。4年生の間も任意で続け、次の代に引き継いで、現在のぶどう山椒のように、りんごがゼミの活動の一部として定着すれば嬉しいです。
2024年に青森の中学校で講演した際、「自分も摘果りんごを使って何かしてみたい」と言ってくれた子や、「龍谷大学に興味を持ちました」と言ってくれた子もいて、驚いたと同時にとても嬉しく感じました。もし、私の活動が若い世代に影響を与え、青森県やりんご産業のための未来の活動に繋がるなら、ぜひ続けていきたいです。