龍谷大学 農学部 食料農業システム学科 3年生の友池心香さんが、「きれいな海を取り戻しながら、地域を活性化する」ためにアプリを使った仕組みを考案。2023年1月に開催された「キャリアゲートウェイ powered by dodaキャンパスービジネスコンテスト2022」で、JTB賞を受賞しました。
今回は友池さんに、アプリの仕組みやコンテスト出場の経緯、今後の展望についてお聞きしました。
趣味は海釣り。
海のごみを見て悲しくなることもしばしば
「両親の影響で、子どもの頃からの趣味は海釣り。大人になった今も、休日は兵庫の須磨や大蔵海岸、舞子でアジやサバ、小鯛、カワハギを釣って楽しんでいます。
私は美しい海の景色を眺めながらのんびりと過ごす時間が大好きなのですが、海にごみが浮かんでいたり、海岸にごみが打ち上げられていたりするのを見て悲しくなることがしばしばあります。
環境保全団体・WWFジャパンの調査によると、すでに海に存在しているといわれるプラスチックごみは合計で約1億5000万トン、今も1年あたり800万トンが新たに流出しているそうです。
また、2050年には、海洋プラスチックごみの量が、海にいる魚の量を上回ると予想されています。私はこの事実を知り、大好きな海がこんなにも汚れていることに驚きました。そして同時に『自分の力で、きれいな海を守りたい』と考えるようになりました」。
拾ったごみの写真をアップすると
地域の特典がもらえる仕組み
「農学部 食料農業システム学科では、食品関連の経営やマーケティングを専攻。地域活性化、地域マネジメントを中心に学んでいます。
大学での学びを取り入れながら考えたのは『地域を訪れる人たちが、楽しみながら海洋ごみを減らす』という、スマートフォンのアプリです。観光客が専用アプリを使い、拾ったごみの写真を自治体に送信すると、拾ったごみの量に応じて特典がもらえるという仕組みです。特典は、地域の特産品や宿泊施設利用料20%OFFクーポン券など、地域支援につながるものを想定しました。
海岸でごみを拾うボランティア活動は、全国各地で進められています。活動は主に地域住民によっておこなわれていますが、私は『観光客にもごみ拾いに参加してもらうきっかけを作れないか』と考えました。このアプリを使用すれば、観光客は観光の合間にごみを拾うことで特典がもらえ、より地域の魅力を発見するきっかけになります。また自治体にとっては、海洋保全への貢献のみならず、観光客の誘致やリピーターの獲得など、地域活性化につながるというメリットがあります」。
先輩や学生仲間の意見を取り入れ
海洋ごみ課題解決アプリのアイデアをプレゼン
「『キャリアゲートウェイ powered by dodaキャンパスービジネスコンテスト』は、大学1・2年生を対象としたコンテストで、自身のキャリア形成に意欲を持つ学生に対して、実践的なアウトプットに挑戦する機会として開催されています。2022年度のテーマは『SDGs課題をアプリで解決』でした。
コンテストの特徴のひとつが、希望した学生は事前にレクチャーを受けられることです。企業の『SDGs』への取組事例をご紹介いただいたほか、アプリの企画にあたり、ノーコードでのアプリ作成に関するレクチャーを受けました。
コンテストのサポーターである他大学の先輩には『プレゼンテーションは自分の想いばかりを伝えるのではなく、ユーザーにとってのメリットも提示した方が良い』というアドバイスをいただきました。
また、大学生と社会人65名に、私が考案したアプリを実際に使用してみたいかのアンケート調査も実施。学生56%と社会人47%が『楽しみながら社会貢献ができそう』『アプリを使ってみたい』と回答しましたが、『観光が目的の場合、ボランティア活動をする時間が取れないだろう』『特典を設けなくても、環境保護というテーマだけで集客できるのでは』という声もありました。様々な意見を聞きながら、話の組み立て方やスライド資料を改善していきました。
コンテストでは1人でステージに立ち、プレゼンテーションをおこないました。『きれいな海を取り戻したい、日本の各地域を活性化させたい』という想いを伝えるための地道な努力が実を結び、結果「JTB賞」を受賞することができました。JTBさんからは『友池さんのアイデアを聞き、社内の環境意識をさらに高めたいと感じました。各事業所で、朝のごみ拾いから始めるのもいいかなと思います』とコメントをいただきました。」
きれいな海を取り戻すため
アプリ開発を目指したい
「私は、日本各地の海をきれいにしたいという大きな夢を持っていますが、個人で動くには限界があるとも感じています。
今後は『龍谷エクステンションセンター』に相談し、地域や企業、ボランティア団体と連携しながらアプリの開発を進めたいと考えています。
海洋汚染は、私たちの生活に直結する非常に大きな問題です。私たちの環境意識を変えていかなければ、美しい海を守っていくことはできなくなります。
一人でも多くの人に、海洋ごみ問題の現状を知り、ともに課題の解決に向けて考えていただきたいです。私の考えているアプリのアイデアが、近い将来そうした課題解決に少しでも貢献できるよう、これからも努力していきたいと思います。