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ともに循環型社会を目指す。
島津製作所と龍谷大学が「プラスチック再利用の包括連携」を締結

2023年5月23日、龍谷大学と島津製作所が、循環型社会形成に向けた包括連携協定を締結しました。島津製作所と龍谷大学のそれぞれで発生する使用済みプラスチック製梱包材を、廃液用ポリエチレン容器として再利用するという取り組みで、日本初の自己循環型リサイクルのモデルとなります。

今回は、京都市中京区にある島津製作所 本社での記者会見のあと、島津製作所 環境経営統括室 マネージャーの三ッ松昭彦さんと、龍谷大学の深尾 昌峰 副学長にお話しをいただきました。
*以下、敬称略

「循環型社会を加速したい」という想いが一致

編集部 島津製作所さまと龍谷大学が、プラスチック再利用の包括協定を結んだ理由を教えてください。

深尾 龍谷大学では2005年より、エネルギー使用量削減など、エコキャンパスに向けた取り組みを実施しています。2022年1月27日に発出した「龍谷大学カーボンニュートラル宣言」では、大学の運営において省エネルギーの徹底や、再生可能エネルギーの普及を図ることを目指す内容を盛り込みました。2022年4月には、環境省と「地域脱炭素の推進に関する協力協定」を結んでいます。2039年までに各キャンパスのカーボンニュートラルを達成しようと動いていますが、循環型の社会を本気で作るには本学だけではなかなか難しいと感じていました。

写真キャプション:龍谷大学 深尾 昌峰 副学長

三ッ松 島津製作所の経営理念は「『人と地球の健康』への願いを実現する」。長年、環境に配慮した製品づくりや、生物多様性の保全に向けた活動など環境経営 を進めてまいりました。循環型社会の形成に向けた取り組みとしては、プラスチックをリサイクルして廃液用ポリ容器や感染性廃棄物ボックス、ゴミ袋に生まれ変わらせており、2021年度のリサイクル率は99.59%となっています。

しかし1社での取り組みでは資源材料が足りず、社会貢献にまで至ることができない。そこで、京都府や京都市からも「サステナブルな取り組みに熱心だ」と評価されている、龍谷大学にお声かけをいたしました。

島津製作所 環境経営統括室 マネージャーの三ッ松昭彦

深尾 島津製作所さまは分析計測機器において世界トップシェアを誇っておられます。また、環境配慮した取り組みをすでに進めておられ、リサイクル実験や実装に向けた技術をお持ちです。「循環型社会を形成したい」という想いは、龍谷大学も同じです。イノベーションの促進や人材育成など幅広い分野においても連携できると考え、参画を決めました。

島津製作所が構築した、日本初の「自己循環型リサイクル」に龍谷大学が参加

編集部 今回の「プラスチック再利用の包括連携」では、島津製作所と龍谷大学で発生したフィルム状のプラスチック梱包材を合わせてつくるペレット(粒状のプラスチック樹脂)を、新品のペレットと混ぜて、約10リットルの廃液用ポリエチレン容器として再生されます。

再生ポリ容器

三ッ松 当社ではすでに、独自で構築した「自己循環型リサイクル」を導入しています。具体的には、京都府宇治市に本社があるホームケルン株式会社に本社で出たプラスチック梱包材を預け、再生容器の量産を委託しています。再生ポリ容器は、本社工場の研究開発部門で使用しています。

リサイクル容器の開発にあたり、もっとも難しかったのは強度の確保です。再生原料を使うと、どうしても容器の角がへこみやすくなり、内容物が漏れるおそれがあります。配合を変えて何度も試作を繰り返した結果、新品のプラ原料に、再生原料を30%混ぜることで使用に耐えうる容器となりました。しかし容器の角は樹脂の定着が悪く、少しの圧力でへこみが生じます。そこで、角を削ることで強度を確保しました。
コストは、再生原料ゼロの従来品とほぼ同じです。リサイクル容器の成形に使用する設備の洗浄に人件費が発生しますが、成形の金型、温度、時間は従来品と同じです。これからは龍谷大学よりプラスチック材が提供されることで、さらに効率化されるでしょう。早ければ、7月または8月より初回生産が始まります。初回はホームケルン株式会社より、容器2000個のうち龍谷大学に500個を、1500 個を島津製作所に納品される予定です。ただ、再生ポリ容器の再々生については、まだ検証が進んでおりません。

深尾 先端理工学部や農学部では、化学物質を含んだ薬剤廃液を保管するために、年間約550個の廃液用ポリ容器を使っています。将来的には年間約0.2トンの使用済みプラスチックを再利用することで、廃液容器をすべて再生品に置き換えられるでしょう。

これからは、知的・人的資源の交流による連携や協力体制を整備する予定です。今後の強度や耐久性テストについては、本学との共同研究も視野に入れていただけると幸いです。

三ッ松 私どもも、龍谷大学の学生たちと関わることを楽しみにしています。今回の包括協定は、京都から日本、そして世界に向けた強いメッセージの発信となるでしょう。2者間だけでなく、地域や他大学、他業種を巻き込むイノベーションになることを願っています。


ホームケルン株式会社

京都府宇治市に本社がある、廃棄物処理とリサイクルの専門企業。
企業や官公庁、飲食店などから排出されたプラスチック・木くず・金属くず・紙・飲料物容器などを、素材や燃料へと生まれ変わらせている。京都府京田辺市にあるメイン処理施設でのリサイクル率は70%以上。「リサイクル推進のパートナー」として、循環型社会の実現を目指している。


「環境配慮への意識を高め、イノベーションの担い手になってほしい」

編集部 学生へのメッセージをお願いします。

三ッ松 龍谷大学からは、環境社会に貢献する人材を育成したいという気概を感じます。島津製作所のようなメーカーでも、他業種でも、どんな仕事でも、環境への配慮は特別なことではなくもはや“たしなみ”だといえます。龍谷大学で環境教育を受けた学生たちは社会に出てから、働き方やライフスタイルにおいて、環境への配慮をベースにした考えをもつ、社会改革の担い手となるだろうと期待しています。

深尾 持続可能な社会形成に向けたカーボンニュートラルの実現は、今や全人類共通のテーマです。そしてカーボンニュートラルへの動きを加速させることと、未来を担う人材を育てることは大学としての社会的使命です。島津製作所さまとの包括協定は、新たな社会創造の世界に学生のみなさんを連れていく手立てのひとつとなるでしょう。

各キャンパスにはリサイクル用の分別ボックスが設置されていますが、回収した資源がきちんと活かされるということを知ってほしいですね。すべては、ひとりひとりの高い意識や行動にかかっています。大学としては、学生たちの「学びたい」「社会を変えたい」という意欲を支え、高められるように環境教育の体制をさらに進めていきます。ともに走り、社会課題の解決に皆で取り組むコレクティブ・インパクトを創り出しましょう。