深草町家キャンパスでは週1回、文学部哲学科教育学専攻の学生ボランティア「京の拠り所」による学習会が開催されています。大学周辺に住む、家庭での学習環境が整いにくい中学・高校生を対象に、本学の学生が勉強をサポートするという取り組みです。
この学習会は「京町家学習会」として2015年4月、本学と公益財団法人京都市ユースサービス協会、京都市の連携事業として始まりました。
今回は、文学部哲学科教育学専攻の林 美輝 教授と学生3名に、学習会の目的と取り組みについてうかがいました。
築160年超の京町家で行われる、中・高生向け学習会
深草町家キャンパスは、文久元年(1861年)に建てられた、築161年の京町家。中2階建ての母家、離れ、中庭、土蔵があります。出格子(でごうし)、通り庇(ひさし)、虫籠窓(むしこまど)など京町家の特徴を備えており、京都市の景観重要建造物に指定されています。
「この学習会は2015年から始まったプロジェクトです。学生ボランティアは、文学部哲学科教育学専攻の有志で構成されています。全国でも、子どもたちへの学習支援事業はさまざまな形で行われています。しかし、大学の町家キャンパスで大学生が子どもたちに1対1で勉強をサポートするという取り組みは珍しいのではないでしょうか」(林 美輝 教授)
「古い京町家は私たちにとっても子どもたちにとっても、新鮮だけど懐かしい。室内はすべて畳敷きで温かみがあり、大学の一施設とは思えないほど。コロナの影響で集まるのが難しくなった時期、オンライン学習への切り替えを考えていました。しかし『京の拠り所』の目的は勉強だけではありません。学校でも家庭でもない、ホッとなごめる第3の場を提供することも役割のひとつです。コロナ禍の現在は時間を短縮、参加人数も絞って開催しています」(大西 慧輔さん/文学部哲学科3年)
子どもによって学力や取り組む課題が異なるため、1対1の個別指導スタイルを採っています。週1回、平日の夕方から約1時間30分、1階の座敷で宿題をしたり、テスト前には対策を練ったりして勉強を進めています。
奥には広い庭があります。コロナ禍以前は、夏は流しそうめん、冬は室内でクリスマス会といったイベントを開催。子どもたちと学生みんなで楽しみながらコミュニケーションを深めました。
勉強も生活も相談できる「お兄さん、お姉さん」的存在
登録している中学・高校生は約15名、大学生ボランティアは33名です。毎年、学生1名が運営責任者であるコーディネーターとなり、京都市ユースサービス協会との連携などを行っています。卒業生の中には、フリースクールの経営、学校の先生、福祉施設勤務など、この学習会での経験を活かして社会で活躍している人もいるそうです。
「学校では集団での授業が中心になると思いますが、ここでは子どもたちひとりひとりと向き合えるような場所作りをしたいという想いをもって活動に参加しています。子どもたちやその保護者が求めているものは『勉強の習慣を身につけたい』『学習の進め方を知りたい』『地域の人と交流したい』など、さまざまです。一緒に勉強したりコミュニケーションを取ったりする中で、子どもたちそれぞれにあった居場所作りを目指しています。また、少し年齢が上のお兄さん、お姉さんたちと交流する中で、子どもたち自身が自分の将来に対してより興味や関心を持って貰えたらと思っています。」(加藤 結愛さん/文学部哲学科3年)
「令和4年度は私がコーディネーターを務めます。新しく参加する子どもたち1人1人の気持ちに寄り添っていくのはもちろん、学生それぞれの目的を叶えられるようにしたいと思っています。進路や生活の相談があればアドバイスもしています。勉強の教え方に悩んだ時は学生でミーティングを行い、ベストな方法を見つけています。中・高校生の子どもたちにとって、私たち大学生は数年後の将来像と重なる部分もあると思います。家族や教師、友人ではなく、年の近い私たちの存在は、子どもたちの心の支えになっているのではないでしょうか」(永島 大輝さん/文学部哲学科2年)