menu

みんなの仏教SDGsウェブマガジン ReTACTION|みんなの仏教SDGsウェブマガジン

「和束茶パンで人を笑顔に!」経営学部生が挑んだ、地域を元気にするビジネスアイデア

2025年8月17日、大阪・関西万博の会場にて、経済産業省近畿経済産業局が主催する「守・破・離KANSAI学生ビジネスアイデアコンテスト」最終審査会が開催されました。このコンテストは、近畿経済産業局が認定する関西ブランド12の中からひとつを選び、全国の学生が地域活性化や観光資源の開発につながるビジネスアイデアを競うものです。
龍谷大学 経営学部・竹谷多賀子ゼミの学生チームは、京都府和束町の特産品「和束茶」を使ったパンを提案し、見事優秀賞(グランプリ)を受賞しました。今回は、健康と笑顔を届ける“和束茶パン”が誕生するまでの軌跡と未来への想いについて、学生3名に話を聞きました。

地産地消と食育の推進を目指した商品を、自分たちの手で

竹谷ゼミでは、観光資源を活かした地域活性化をテーマに活動しています。今回、7月に始動したプロジェクトでは、豊かな自然と茶文化を誇る京都府和束町の特産品「和束茶」に着目し、町の魅力を発信するとともに、地域の活力を高めるビジネスアイデアを提案しました。

水井 万丞さん(経営学部3年生)

「京都府相楽郡にある和束町は、豊かな自然に囲まれたお茶の名産地です。関西ブランド12の中から和束茶を選んだ理由は、私が通っていた三重県松阪市の小学校の給食で、松阪茶を使った”緑茶パン”を食べた経験があり、その美味しさを今でも鮮明に覚えているからです」(水井さん)

植田 渚沙さん(経営学部3年生)

和束町は、特に抹茶の品質において世界的に高く評価されており、山の斜面に広がる茶畑の景色は圧巻で、“茶源郷”と呼ばれるほどの美しさを誇るそうです。一方で、交通アクセスの不便さなどから、若年層や海外市場における認知度が低いという課題を抱えています。
「和束茶の魅力をより多くの人に知ってもらいたいという思いから、学校給食に地元の食材を取り入れることで、子どもたちが地域の味に親しむきっかけとなり、地域農業の振興にもつながると考えました。パンの形はコッペパンと迷いましたが、家庭でも再現しやすいように、フライパンで簡単に調理できる蒸しパンを採用しました」(植田さん)

現地の声に耳を傾けて見えてきた「本当の地域活性化」

書類審査を通過した3人は、最終審査会に向けて本格的に動き出します。
本選4日前には、初めて和束町を訪れ、現地の方々と直接顔を合わせしました。

山田 健心さん(経営学部3年生)

「竹谷先生の知人を通じて、商工会、パン工房、茶農家の方、そして地元住民の方々を紹介していただきました。私たちはプロジェクトの概要を説明し、茶畑の見学などを通じて交流する機会を得ました。また、私たちが試作した和束茶パンも皆さんに試食していただきました」(山田さん)

和束町でのフィールドワークは、彼らの視野を大きく広げる転機となりました。地域の声に耳を傾ける中で、茶農家・上香園の岡田さんからいただいた「最終目標を一般販売にしてしまうと、その先につながる未来が見えない。もっと高みを目指すべきだ」という言葉が、プロジェクトの本質を問い直すきっかけとなったのです。

商品の販売にとどまらず、地域に長く根付き、未来へと続く商品を生み出すにはどうすればよいのか。岡田さんの言葉を手がかりに、「健康」というテーマを取り入れ、和束茶の魅力を最大限に活かした「地域資源を活かし、健康と文化を届けるパン」という新たなコンセプトにたどり着きました。

「パンは、和束茶の抹茶と玄米茶を組み合わせたWブレンドにしました。抹茶には脳の認知機能を高める抗酸化作用があり、玄米茶には腸内環境を整える効果があるといわれています。生地には国産米粉を100%使用し、無添加・グルテンフリーで仕上げることで、アレルギーにも配慮した身体にやさしいパンとなっています。抹茶と玄米茶を合わせたことで独特の風味が生まれ、とても美味しく仕上がりました」(植田さん)

最終的に、プロジェクトのタイトルは「和束茶パンで人を笑顔に! 地域資源×健康×食育で創る持続可能な未来」に決定。メリットに「健康力アップ」、ベネフィットに「茶農家の収益向上・安定」、そしてバリューに「地域ブランド価値向上」を掲げました。

3分間のプレゼンに込めた想い

迎えた本選当日。会場は大阪・関西万博のフェスティバル・ステーション。ステージの周囲には関西ブランドのブースが立ち並び、和束町のブースには茶農家の岡田さん夫妻の姿もありました。
竹谷ゼミの2、3年生29名も運営ボランティアとして参加し、舞台裏から仲間を支えました。

「全国から集まった10組のファイナリストによるプレゼンテーションは、どれも非常にレベルが高く、その完成度の高さに圧倒されました。それでも、ここまでやってきたことを信じよう。自分たちの想いをまっすぐ伝えようと3人で励まし合い、気持ちをひとつにしてステージへと向かいました。最後は、これまで積み重ねてきた準備と情熱を胸に、自分たちらしさを大切にしながら、自信をもって発表に臨むことができました。」(山田さん)
「プレゼンでは、子どもへの食育と地域文化の継承、地産地消による地域農業支援、地域経済の活性化と雇用創出、そして和束茶の国際的なブランド力強化といった社会的意義を強調しました。将来的なビジョンとしては、海外市場での『健康抹茶パン』ブランドの確立、観光体験型商品である茶畑ツアーとの連動を通じて、和束町を『世界のお茶と健康食の町』として発信していくことを提示しました。また、審査員の皆さまには、私たちが準備した和束茶パンを配布し、実際に試食していただきました」(水井さん)

持続可能な地域社会づくりに向けた明確なビジョン、実現可能なビジネスアイデア、そして熱い想いが高く評価され、これまでの努力がついに実を結びました。結果発表で「優秀賞(グランプリ)」の名前が呼ばれた瞬間、驚きと喜びが入り混じり、思わず顔を見合わせたそうです。

学びのバトンを未来へ、和束茶パンが描く地域共創のかたち

グランプリを受賞した3人は、今回の成果を一過性のものにせず、和束茶プロジェクトをゼミの後輩たちへと引き継ぎ、実現に向けて継続的に取り組んでいきたいと考えています。
目指すのは、和束町の学校給食への導入と、一般販売の実現です。

「和束茶パンで人々の暮らしを健康にすること、和束町の美味しいお茶を国内外の人たちに知ってもらうこと、そして和束茶の国際的なブランド力を高めるという夢を、ゼミの後輩たちと一緒に実現していきたいです」(山田さん)

「和束茶パンで人を笑顔に!」という挑戦は、終わりではなく始まり。このプロジェクトは、地域とのつながりを深める活動として続いていきます。