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望む性で生きられる人を増やすために。学内外で活動する、政策学部の学生グループ「にじここ」

「Ryu-SEI GAP」とは、政策学部の学生が主体となって、教職員と一緒に地域課題の解決に取り組む実践型プログラムです。彼らは大学ではなく、京都市伏見いきいき市民活動センターを活動拠点としています。
Ryu-SEI GAPで結成された、政策学部2年生4名によるチーム「にじここ」の活動目標は「自分の望む性で生きられる人を増やす」。多様性を認め合う社会の実現を目指し、学内外で様々な取組をおこなっています。

教授や先輩たちにアドバイスをもらいながら勉強

「私たちのチーム名『にじここ』は、“ここ・龍谷大学から個々の多様性を認め合う虹をかけよう”という願いを込めて名付けました。虹は、LGBTQ+の象徴です。活動目標『自分の望む性で生きられる人を増やす』を設定したのは、Ryu SEI-GAPの活動中に『男女関係なく恋バナができれば楽しいよね』という話題になったことから。私たち4人はLGBTQ+の当事者ではありませんが、誰もが自分らしく生きるためには何が必要なのだろうと勉強を始めました。

龍谷大学は、学生と教職員が協力して『性のあり方の多様性に関する基本指針』を策定しています。LGBTQ+に精通してる教授や、『だれでもトイレ』を学内に設置するために活動してきた先輩たち、宗教部の職員さんたちにアドバイスをもらいながら、活動の方向性を探ってきました」。

当事者が求めているのは「プライバシーが守られた居場所」

「2022年10月、大阪で開かれたLGBTQ+関連イベント『レインボーフェスタ』にボランティアスタッフとして参加しました。当事者たちがゲームを通して交流するブースを担当したのですが、その後SNSのアカウントを交換する人たちを大勢見かけ、みんな『つながり』を求めているのだなと感じました。非当事者の多くは、『排除する気はないけれど、身近に当事者がいないから課題を感じない』という人たちでしょう。私はイベントを通して、今までの自分も、また他の非当事者たちも、無意識のうちに当事者を排除していたのかもしれないと考えるようになりました。そして、多様性を認めようという啓発だけでは、課題を自分ごとと捉えるのは難しいこともわかりました。

ある講演会で、LGBTQ+の支援団体の方がこう話していました。『就職活動では、男性は男性らしい、女性は女性らしいスーツ姿が求められる。採用側の理解が進んでいないせいか、面接で性自認について話したら何十社も落ちたという人も少なくない。やがて、本当の自分を隠さなければいけないのかと、自分らしく生きていく自信がなくなってしまう』。

自分が自分であることを認めているのに、社会がそれを認めていないという状況は、とても苦しいはず。とはいえ、『誰にでも話せるわけではない』と感じている当事者たちにとっては、対面でのコミュニティに不安を覚えるでしょう。私たちにも何かできないかと思い、匿名で相談や雑談ができるオープンチャットの開設に向けて現在準備を進めています」。

東京のLGBTQ+関連イベントで、当事者たちの声を集める

「2023年4月22日〜23日、東京都渋谷区・代々木公園で開かれたLGBTQ+関連イベント『東京レインボープライド2023』に、学生団体『龍谷大学LGBTs交流サークルにじりゅう』と宗教部の教職員との共同でブースを出展しました。『東京レインボープライド2023』は、多様な性のあり方を認め合う社会を目指す、アジア最大級の祭典です。私たちのブースの目玉は、カラフルなビーズを自由に組み合わせてレインボー念珠を作るワークショップ。宗教や信条にとらわれず、好きな色を自分らしく選べるようにという想いを込めました」。

「性自認や性的指向についてのアンケート調査も実施。誰にカミングアウトしているか、自分をマイノリティと思っているか、相談できる環境があるか、大学に求めることはといった質問に、100名以上がご回答くださいました。驚いたのは、すでにカミングアウトしているという人や、自分のことをマイノリティだと感じていない人が多かったこと。仮に大学内でアンケートを実施した場合、まったく違う結果になっていたと思います。アンケート結果から、当事者たちが求めているのは『居場所』と『つながり』であることがわかり、大阪でのイベント時と同じだと感じました。

イベントには積極的に動く人がいる一方で、まだLGBTQ+の確信がない人や、性自認を隠している人たちもいます。そういった人たちは、どのように人とつながりをもてばよいのか迷っている印象でした。この経験から、改めて私たちは『プライバシーを確保しつつ、人とつながりをもつことができる居場所』を作ろうと決意しました」。

誰もが生きやすい社会への第一歩は、「無関心」をなくすこと

「多様性を認め合う社会を実現するという大きな目標を掲げながらも、具体的に何をすれば良いのか迷っていた時に、当時の京都市伏見いきいき市民活動センター代表の方から『Ryu-SEI GAPの活動で、誰かひとりでも救われたらいいよね』と声をかけられました。居場所を作ることなら私たちでもできる、居場所があれば誰かの心を軽くすることができる。そう考え、活動の指針を『ひとりでもいい、誰かの心を救おう』に決めました。

私たちはLGBTQ+の当事者ではありません。しかし活動を通して、LGBTQ+の方たちが自分らしく生きるために様々な課題に直面していることを知りました。その課題がどこからやってくるのかを紐解いてみると、私たちが以前そうであったように、社会がこの問題に「無関心であること」だと思うのです。
無知や無関心は、時に差別を生み出します。だからこそ私たちが、社会とLGBTQ+の方たちの溝を少しでも埋めたい。それが『ひとりでもいい、誰かの心を救う』ことにつながり、結果的に誰もが生きやすい社会づくりに貢献できると信じています。