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みんなの仏教SDGsウェブマガジン ReTACTION|みんなの仏教SDGsウェブマガジン

『ReTACTION』のウェブコラムを制作中 文学部のプロジェクト「実践ライティング」

1学年に約1,000名、文学部は11の学科専攻を有する龍谷大学で最大規模の学部です。2017年からは学科専攻横断AL(アクティブ・ラーニング)科目の文学部共通セミナー、2019年からはPBL(プロジェクト・ベース・ラーニング)科目の「文学部プロジェクト実践発展演習」をスタートさせています。その目的は「社会とつながる文学部」で、「すべての基盤となる言葉」を学び、「言葉のプロフェッショナル」を育てること。2023年度の授業を担当している滋野正道特任講師に、演習の期待感を伺いました。

学科を横断して学ぶチャレンジングな演習

同じ文学部でも普段交わることのない、様々な学科の2年生24名が共に学ぶ「文学部プロジェクト実践発展演習」。書く力はもちろん、調べる力、考える力、議論する力、発信する力などを養っていく、課題解決型の授業が行われています。1年をかけて進めていく演習では、昨年度までは「伏見でのSDGsの取組を取材した冊子の刊行」、「京都市下京区のまちあるきマップの制作」「オーガニックコスメのリ・ブランディングと新たなギフト商品の開発」などに取り組みました。2023年度は、言葉の根本を見つめ直す「実践ライディング」の演習がおこわれました。

 

「今年の演習では、ウェブコラム制作に必要なスキルを身につけ、チームで取材・執筆をおこないます。前期はウェブコラムに取り掛かる前の準備段階として、夏のオープンキャンパスで公開する記事作成に挑戦しました。大宮キャンパスの周辺を歩き、自分たちがすすめたいスポットを絞って、それをオンライン上にマッピング。オープンキャンパスにやってきた高校生たちにスポットの魅力をビジュアルと口頭で伝えました。演習を受けている学生の中には、コミュニケーションが苦手だと話す学生もいるのですが、高校生と話している様子が、みんなとても楽しそうで。自分の思いをしっかり話せるし、コミュニケーション力があることを目の当たりにした、良い機会でした」

仏教SDGsが身近になる4つの記事を執筆

自分たちのやりたいこと、いいなと感じたことを紹介する前期のグループワークは無事に完結。後期からはいよいよ、龍谷大学が発信するウェブマガジン『ReTACTION』向けの記事作成が進められています。

「『ReTACTION』は仏教SDGsウェブマガジンと位置付けている媒体ですから、取材テーマもSDGsに関連づけたものに決定。“LGBTQ”、“ファッションロス”、“地域活性化”、“外国人労働者”をテーマに4つの記事を作成していきます。4チーム6名ずつで協力し合って企画、対象者へのアポイント、取材・撮影、執筆、編集、校正を進め、12月の初旬には次年度入学予定の龍谷大平安高校生に向けて内容を発表。学生たちが捉えたソーシャルグッドを学外まで広めることがゴールです」

 

演習の課題を通して、普段の生活では話すことのない人と向き合うことで、これまで遠かった社会問題との距離が近くなるかもしれない。地域社会のいろんな方と出会い、そこで心に残った言葉を書き留め、伝える言葉を紡いでいくうちに、取材前には見えていなかった新しい真実を知るチャンスとなります。

 

「頭だけで考えるのではなく、実際に動いて現場の声に触れる、そこがとても大事な作業だと思うんです。私の専門分野が『持続可能な地域づくり』なのも、大学3年から4年生にかけて東日本大震災でボランティアを経験したことが大きく影響しています。実際に現場入りし、被災された方や復興支援に携わっている方とのリアルな声を聞くことで、テレビやネットニュースでは掴めない災害現場の真実を知りました。人とのつながりが途絶え、コミュニティが存在しない環境は、人の生死に関わるのだと学び、地域づくりや地域活性化の道に進むことを決意したんです。

龍谷大学の学生たちにも、教室の外に出ていろんな人たちと話をする中で、自分自身が生きてきた場所とは違う社会があること、コミュニティはひとつじゃないし、いろんな考えが存在することを感じてもらえればいいな、と思っています」

言葉の力でコミュニティの関係性を円滑に

文学部での学びにおいて、仲間や教員とたくさんディスカッションすることに加え、学外の地域の人たちと話す機会を創出することも重要だと考えています。

 

「今回、『いろんな年齢・いろんな立場の人の目に触れるウェブマガジンの記事を書く』という経験をきっかけにして、文学部の学生たちに、より言葉に敏感になってほしいと願っています。例えば、先日ある企業とコラボレーションした授業で、学生がポスターを作る機会があったんですね。そのポスターのキャッチコピーに“従業員”という言葉が使われていたのですが、企業の方から指摘がありまして。その企業では、社員を従業員と呼ぶことがなく、その理由は『社員は従う人ではないので』というご返答でした。私たちにとっては何気なく使う『言葉』でも、企業にとっては、経営理念やスタンスを表す重要な『言葉』だと気がつきました。

記事を書く時には、その単語が持つ言葉のニュアンス、漢字に含まれる意味合いを感じながら、言葉を選んでいく必要があります。どの言葉が最適なのか、それは現場の声を集めないとわかりません。言葉を専門に選んだ文学部の学生には特に、人との対話を重ねながら、言葉の背景に敏感になってほしい。言葉ひとつにこだわりを持って表現していく力を培ってもらえればと思います」

 

地域の自治会、PTA、大学の課外活動など、どこのコミュニティでも円滑な関係性を作るのは言葉によるコミュニケーション。そしてどの言葉の選択にも正解・不正解はなく、コミュニケーションスタイルは人の数だけあると、認識することも大切なことです。

 

「最近、関心を持っているのが人間の弱さや『モヤモヤ』でして。誰もが自己主張ができる強い人間ではありません。世の中にはいろんなコミュニケーションがあると思うんです。誰しも弱い部分があるという認識を持ち、『助けてください』とか『支えてほしい』とまっすぐに言える、それもまたひとつのコミュニケーションです。

昨今、自己主張だけでなく相手の気持ちや考えを尊重できる、アサーティブコミュニケーションという言葉をよく耳にしますが、人の弱さがわかるから成り立つコミュニケーションだと感じます。言葉を使って本音や弱さを伝え合える、安心安全だと感じるチームを作り、まずは『ReTACTION』の記事を作成。そして、そこで終わりではなく、この演習をきっかけに新しいコミュニティを作るなど、次の行動につなげていってくれることを期待しています」

 


~お知らせ~
12月以降にこの授業を受けた学生の記事をアップ予定にしています。