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ジェンダー問題をたくさんの人たちと一緒に考えるために。 政策学部の学生がラジオ番組を制作

龍谷大学 政策学部 松浦さと子ゼミの学生5人が、ジェンダーをテーマにしたラジオ番組を企画・発信。身の回りのジェンダー問題をテーマに、ゲストを招いて話す番組「ラジオでジェンダー」は、京都市中京区のコミュニティーFM局「京都三条ラジオカフェ」で、2023年1月〜12月に放送されました。
今回はジェンダー問題に関心をもった経緯と、ラジオ番組で発信する意義を、道明 愛海さん、久保田 竜雅 さん、熊谷 彩音さんにお話しいただきました。

子ども時代には気づかなかった「性差の違和感」

久保田/子どもの頃、「男は泣くんじゃない」「男なんだからハキハキ話せ」と大人に言われて育ちました。その時は大人の言うことが正しいと思っていました。しかし、いま考えると、大人たちから“社会から求められる男らしさ”を押し付けられていたように感じます。私は大阪府出身。小・中学校の出席名簿は男女混合でしたが、他の地域では違うと聞いたことがあります。

熊谷/私が住んでいた香川県では誕生日順で、男子が先、女子が後でした。私はスカートを履くのが好きではない時期があったのですが、当時の「女性は女性らしい服装をすることが当たり前」という世間一般の風潮から、女性らしくない自分はだめなのかなと悩んでいました。

道明/私は理系でしたが、高校の理系クラスは男子に比べて女子の数が極端に少なかったですね。親戚から「女子なのに理系なんて優秀なのね」「リケジョってすごいね」と、性別ありきで評価されることにモヤモヤを抱えていました。ジェンダー問題に関心をもつようになったのは、政策学部 松浦さと子ゼミに入ってからです。

熊谷 彩音さん(政策学部 /3年)

熊谷/「ジェンダー問題の解決に取り組んでいる」というと、地方では「発展家なのね」と揶揄されたり、「進歩的な考えについていけない」と言われたりすることがあります。しかし、大学では皆が平等であり、多様性を自然に認め合っていると感じます。龍谷大学は性別やセクシュアリティなどにかかわらず、すべての人が自分らしく安心して過ごすことができるよう様々な取組をおこなっています。性別に関わらず利用できる「だれでもトイレ」は深草、瀬田、大宮のキャンパスで多数設置されています。性的マイノリティが「存在する」ことを前提として施設が作られているのです。

ジェンダー問題に詳しいゲストを迎え 学生が感じていることを素直に伝える

ゼミ代表の道明 愛海さん(政策学部 /3年)

道明/ゼミのテーマは「コミュニティメディア論」。松浦先生から「コミュニティメディアは、地域の課題を解決する手立てのひとつ」と教わりました。私たちは、性別による偏見や経済格差などのジェンダー問題は、地域課題のひとつだと考えます。ジェンダー問題を掘り下げて研究するなかで、何かのメディアを使って発信しようと考えました。新聞やフリーペーパーなどの紙媒体も検討しましたが、活字よりも声のほうがより気持ちを伝えやすいだろうと考え、コミュニティFM局での番組作成を決めました。コミュニティFM局は放送エリアが限定されている、地域に寄り添うメディアです。コミュニティFM局「京都三条ラジオカフェ」の主な放送エリアは京都市中京区と下京区です。

京都市中京区寺町三条にあるNPO放送局「FM79.7MHz京都三条ラジオカフェ」

熊谷/番組名は「ラジオでジェンダー」、キャッチコピーは「ジェンダーについてイチから学ぶ学生ラジオ!」。私たちZ世代の学生の視点からジェンダーに対する疑問を毎回テーマとして設定し、それぞれのテーマに詳しいゲストに現状や工夫点などを教えてもらう番組です。

久保田/これまでのテーマは、国際女性デー、だれでもトイレ、就職活動、男性育休など。ゲストとして、「京都市男女共同参画センター ウィングス京都」の職員の方、龍谷大学で育休を取得した男性職員の方、性をテーマにした映像作品を上映する「関西クィア映画祭」を運営するリーダーの方たちにお越しいただきました。

熊谷/私たちはテーマについて事前に勉強し、ゲストと事前打ち合わせをすることで、あらかじめ台本を作成しています。しかし台本を作りこみすぎると、臨場感を大切にするラジオの魅力が失われてしまいます。また、「ゲスト」と「知識を身につけた学生」の対話になってしまうと、リスナーを置き去りにしてしまいます。
そのため、私たちは専門用語などを噛み砕き、リスナーに対して身近に問題を感じていただけるような伝え方を工夫しています。そして収録では、ゲストの話を聞いて感じたことを、「自分の言葉」を大切にして伝えるよう心がけています。

ゲストを招いてのオンエアの様子

久保田/「京都三条ラジオカフェ」は、大学生のみならず、幅広い年代の方に親しまれています。私たちの番組では40〜60 代と、ちょうど私たちの親世代のリスナーが多い印象です。

道明/私の母も放送を聞いてくれています。母は「昔は男性が働き手で女性が家事をするという分担が当たり前やったけど、時代が変わったのね。男女の偏見がなくなり、女性が生きやすい社会になりつつあるのね」と、感想を話してくれています。

これまで当たり前だった「性差」をなくし 新しい価値観で生きられる社会へ

道明/性は単純に男性と女性に二分できるものではないし、LGBTQに当てはまらない人もいます。どんな考え方も間違いではない。私たちがラジオ番組で伝えたかったのは、「いろんな選択肢が増えた」現状を知ってほしい、新たな考え方や価値観を共有したいということです。

熊谷/ジェンダーに関する問題を抱えた生きづらさを、周囲になかなか話せないという人も多い。その人たちが、私たちの活動を通して「こういう意見をもっていてもいいんだ」「生きづらさを感じているのは私だけじゃない」「誰かに話してみてもいいかな」と思える社会づくりの一助になれたら嬉しいです。

久保田 竜雅 さん(政策学部/ 3年)

久保田/私はゼミでの勉強やラジオ番組の制作を通して、世の中にはまだまだ根強いジェンダー問題があることを知りました。私が理想とするのは、性差に関係なく誰もが対等に競い合うことができ、能力を適正に評価される社会。私たちの活動により、自分らしく、楽しく生きられる人がひとりでも増えていることを願います。