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SDGs EYEs:不妊治療支援の動き活発に

一部企業の間で従業員の不妊治療を後押しする動きが活発になっています。特に目立つのが生命保険業界の動きです。住友生命は2023年4月に「不妊治療のための両立支援休暇・休職制度」を導入しました。有給休暇とは別に月に3日間、給料支給で従業員が不妊治療で休める制度をつくりました。また不妊治療を目的に、最長1年半、休職できるようにしました。同社が従業員を対象に実施したアンケートによると、約6,300人の回答者のうち2割弱が「不妊治療や不妊検査の経験がある」と答えたそうです。同社の人事担当者は「想定よりも多かった。何らかのサポートが必要だと感じた」と話していました。

見直される支援休暇・休職制度

第一生命は学業などを目的に長期休暇が取得できる「Myキャリア準備休職制度」の対象に、不妊治療を加えました。この制度を利用すると、最長3年間休職が可能です。住友生命、第一生命ともに休職の場合は無給となりますが、不妊治療のために退職するよりは雇用の受け皿が用意されている分、安心できると捉える従業員も一定数はいると考えられます。また日本生命は基本給が支給される「傷病特別休暇」を改め、新たに「治療・介護サポート積み立て休暇」を導入しました。従来、有給休暇が未消化の場合、最大63日までしか休暇を積み立てられなかったのが、これにさらに60日を加え、最大123日積み立て可能にしました。この積み立てを利用して長期で休みを取り、不妊治療に通えます。

 

当然のことではありますが、私が驚いたのはこうした制度は「男性従業員も使える」ということです。例えば住友生命の場合、男性従業員も不妊治療のために1年半、休職できます。まだ実際に使ったことがある人がいないため、「1カ月など短期の時はチーム内でカバーする。でも半年や一年の場合は新たに人を手当てするのか、ケースバイケースで考えていきたい」(住友生命人事担当者)と話していました。今後、どのように運用していくのかも気になるところです。国の「イクメン推進」の動きもあり、男性が長めの育児休暇を取る事例がこの1、2年で急速に増えてきました。不妊治療の休暇ももっと事例が増えてくると、当たり前に休める時代がくるかもしれません。

続々と拡がる不妊治療支援サービス

最近は企業や個人の不妊治療をサポートするスタートアップも続々と誕生しています。ファミワン(東京都渋谷区)はLINEを活用し、匿名で専門家に病院選びや妊活の進め方を聞けるサービスを提供しています。月額3,980円で、不妊専門の看護師や臨床心理士、培養士などに個別相談が行えます。同社のホームページによれば、石川勇介代表取締役自身、妊活で苦労したことがきっかけで起業にいたったそうです。「私と同じように辛く苦しむ夫婦を一組でも減らし、未来に進むために背中を押してあげたい」と設立の思いで触れています。

https://famione.co.jp/outline/establishment/

 

Vitalogue Health(バイタログヘルス、東京都渋谷区)は自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」を提供しています。検査キットを使って自宅で自己採血し、ホルモンの数値から卵巣年齢などが把握できる仕組みです。生理用ナプキンの無料配付サービス会社ネクイノ(大阪市北区)と連携し、ナプキンを収納する箱型のディスプレーにホルモン検査の広告を流す実証実験なども行っています。

一部の広告では箱形ディスプレーのみで表示するキャンペーンを行って効果を確かめ、新しいトイレ空間の広告がどのように作用していくかを明らかにしていくそうです。バイタログヘルスは自社製品を通じ、PMS(月経前症候群)や生理痛、妊娠、更年期といった年齢などによるホルモンの変化を知ってもらい、ライフスタイルやキャリアプランの選択肢を自分で主体的に選ぶ人を増やしたい考えです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000072374.html

 

アーティストのスプツニ子!ことマリ尾崎さんも妊活や生理など女性の健康課題に関連した企業向けセミナーを行うスタートアップ「Cradle(クレードルhttps://cradle.care/)」を2019年に立ち上げています。今年4月にセミナーを視聴する機会があり、印象的だったのは、尾崎さんが「我が社を仲介役としてぜひ活用してください」と訴えていたことでした。

妊活や生理などの話題は、男性上司から女性社員に話を降るのはまだハードルが高いです。そんな際に、「クレードルで何かいろいろセミナーをやっているらしいよ。聞いてみたら」などと話しかけることで、間接的に女性社員の背中を押すことができます。クレードルのサービスは資生堂やNECなど大手企業が女性活躍支援や健康経営推進を目的に導入する企業が拡大しています。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットの中に「2030年までに、すべての人が性や子どもを産むことに関して、保健サービスや教育を受け、情報を得られるようにする」とあります。また企業が妊活支援を行うことはゴール8「働きがいも経済成長も」につながる取り組みと言えます。スタートアップの活躍も後押しとなり、2030年までには今よりもっと妊活がオープンに語られ、女性だけでなく男性も妊活のために職場で休暇が取れるようになることが期待されます。

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文/松本麻木乃:専門紙記者
2004年、日刊工業新聞社入社。化学、食品業界、国際を担当、2020年から不動産・住宅・建材業界担当の傍らSDGsを取材。近著に「SDGsアクション<ターゲット実践>」(共著)。

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