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SDGs EYEs:広がるサステナブルツーリズム

旅行業界でサステナブルツーリズムが広がっています。二酸化炭素(CO2)排出量の少ないホテルや交通機関などの活用を企業・学校に提案し、「CO2ゼロ旅行」などとして売り出しています。今後は観光をする際にもエコを意識した行動が求められそうです。

阪急交通社は、2021年9月、企業が実施するイベントや旅行で発生するCO2をゼロ化する支援事業を始めました。例えば、旅行を企画する際には、再生可能エネルギーを使っている宿泊施設を提案したり、飛行機よりも鉄道移動を勧めたりします。こうしてCO2の排出量を可能な限り減らす努力をした上で、それでも出てしまった分は、CO2削減価値があるクレジット(Jクレジット制度)を使って帳消しにします。Jクレジット制度は、国のCO2排出量取引制度のことで、企業の森林保全や再エネ導入などのCO2を減らす取り組みに国がクレジット(認証)を与え、このクレジットを購入した企業は自社が排出したCO2と相殺できる仕組みです。

2020年秋に政府が2050年までの脱炭素化を表明して以降、企業の間では政府と歩調を合わせて「50年の脱炭素」を目標に据える動きが相次いでいます。こうした需要を捉え、観光分野から企業の脱炭素化を後押しする狙いです※。
※ 阪急交通社ニュースリリース
https://x.hankyu-travel.com/pdf/hankyu-travel/210921.pdf

学びや宿泊施設の選択指標としても期待が高まる

JTBは2021年12月、修学旅行における「CO2ゼロプログラム」を発売しました。まず旅行前に事前学習としてSDGsワークショップを行い、環境や社会課題に対し、生徒の当事者意識を育てます。その上で旅行中は可能な限りCO2を減らす行動を取り、移動などでどうしても発生した分は環境価値のある「グリーン電力証書」の購入で相殺します。この証書も、Jクレジットのように、購入した企業はCO2を減らしたとみなせます。同社は2022年度に10万人の生徒のプログラム利用という野心的な目標を掲げており、目標を達成すると「CO2ゼロ旅行」は一気に知名度が高まる可能性があります※。
※ CO2ゼロ旅行プログラム
https://press.jtbcorp.jp/jp/2021/12/sdgs-co2.html

HISは、米国法人でサステナブルツーリズムを推進する旅行予約サイト「Copolo」を立ち上げました。気候変動対策に強みを持つノルウェーのベンチャー「CHOOOSE」と提携し、旅行者が自身の旅行で排出するCO2をフライト・ホテル・レンタカーごとに計算できる仕組みをつくりました。オプションで「カーボンオフセット(CO2相殺)プラン」を用意し、同プランを購入した人は、排出量を相殺することが可能です。オプションで集めた資金は、CHOOOSEを通じ、CO2を削減するプロジェクトの支援に充当されるとのこと。米国とカナダの在住者をターゲットにした取り組みですが、日本に上陸する日も近そうです。

デンマーク人のSDGs専門家によると、同国でもすでにCopoloのようなサイトが立ち上がっており、消費者は「Aホテルは少し高いけど、100%再生可能エネルギーだからAホテルにしよう」などと選べるそうです。デンマークは1994年に環境に配慮した宿泊施設のエコラベル「グリーンキー」を設け、環境対応に熱心な宿泊施設が評価され、消費者も頑張る施設を応援できる環境をつくってきました。HISがノルウェーの企業と組んだように、デンマークやノルウェーなどの北欧諸国は、SDGsランキングで常に首位につけ、世界の中でも環境面で先進的な取り組みを行っている地域です。北欧発のサステナブルツーリズムの波が日本にもやってくる予感がします。

歩く観光を促進することで、エコなだけでなく、新たな観光資源の発見にも

少し話はそれますが、中長距離の旅行と言えば、飛行機や電車など何か乗り物に乗ることが一般的です。ですが、エコの観点に立つと、歩いて移動することが最も環境にやさしい行為と言えるでしょう。三菱地所は2021年11月、JTBコミュニケーションデザイン(東京都港区)と連携し、歩き旅を楽しむためのスマートフォンアプリ「膝栗毛」を立ち上げました。「身近なまちの、何気ない道を、エンターテイメントに」をコンセプトに、今までは通り過ぎていた身近な街を楽しむコンテンツ・情報を提供しています。

例えばユーザーは、マッピングされた歩き旅ルートを歩きながら、その土地の歴史や文化に関する情報をアプリで知ることができるほか、旅の最中にGPS連動型音声ガイドを聞いて旅情報を得ることが可能です。第1弾として江戸時代に整備された五街道の一つ、東海道を舞台に、日本橋―三島宿(静岡県)、京都―草津宿(滋賀県)の13区間で、取り組みをはじめました。順次、エリアを広げる予定です。ルートごとに提携店舗「膝栗毛茶屋」があり、ユーザーは茶屋の店員や他のユーザーと交流を楽しむこともできます※。歩き旅で環境にやさしい上に、地方創生にもつながり、個人的には八方よしでとてもSDGs的な取り組みだと感じました。

※ 歩き旅コンテンツサービス「膝栗毛」
https://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec211125_hizakurige.pdf
学生のみなさん、今年の春休みは、いつもと趣を変えて、サステナブルツーリズムに挑戦してみてはいかがでしょうか。

文/松本麻木乃:専門紙記者
2004年、日刊工業新聞社入社。化学、食品業界、国際を担当、2020年から不動産・住宅・建材業界担当の傍らSDGsを取材。近著に「SDGsアクション<ターゲット実践>」(共著)。