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SDGs EYEs:環境にやさしい住宅のすすめ

ZEH(ゼッチ)という言葉をご存じでしょうか。窓や壁の断熱化や省エネ設備の利用、太陽光発電による創電などを組み合わせ、年間のエネルギー消費量を実質ゼロとする住宅のことを指します。ZEHはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語です。断熱や省エネで可能な限りエネルギー消費を抑え、出てしまった分のエネルギーは電気をつくることで“帳消し”にし、エネルギー収支をプラスマイナスゼロにしようと考えます。日本政府が目標とする2050年の脱炭素化に向け、大手を中心に住宅メーカーはZEH住宅を業界標準にしようと動き出しています。

これからの住宅の標準装備ZEH

「セキスイハイム」で知られる積水化学工業は、2022年度までに、兵庫県西宮市や京都府福知山市など全国10分譲地(約300戸)で戸建て住宅の販売を予定し、このすべてをZEH住宅にする方針です。高断熱の躯体性能をベースに、太陽光発電システム、蓄電池、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)の3点セットを搭載し、ZEH仕様としています。

同社は2020年度の新築戸建住宅のZEH比率が85%(北海道除く)となっており、全国での分譲販売の取り組みにより、21年度には同社が販売する住宅のZEH比率90%を目指しています。

積水ハウス(積水化学と出自は同じだが別会社)は、すでに20年度でZEH比率91%(北海道除く)に達しています。同社は「住宅供給事業者として、日本全体のCO2排出量の15.5%を占める家庭部門の脱炭素化を推進する責務がある」(広報)と捉え、ZEH住宅の普及を推進しています。

一条工務店は、積雪で太陽光発電に適さないとされる北海道を含めても、20年度でZEH比率95%以上を実現しています。何が言いたいかと言いますと、今や大手住宅メーカーが販売する住宅には、ほぼすべて太陽光発電が付くようになってきたということです。

ZEH住宅普及に向けた取り組み

消費者の立場に立つと、環境にやさしいのはいいけれど、値段が高くなるのは嫌だというところでしょう。キャンペーンをしている場合もあり、一概には言えないのですが、太陽光発電を付けることで、価格は普通の住宅よりも、100万円以上割高になってしまう場合があります。先に挙げた3社以外の住宅メーカー幹部の中には「価格がネックで消費者はまだZEH住宅の購入には消極的」と見て、本腰を入れてZEH住宅に取り組んでいない企業もあります。

しかし、最近はエネルギー企業と組んで、太陽光発電システムを実質0円で設置する住宅メーカーも出てきています。三井ホームは東京ガスや静岡ガスなどと組んで、三井ホームの新築戸建て住宅を注文し太陽光発電システムと家庭用燃料電池「エネファーム」を同時に注文した顧客を対象に、太陽光発電システムを実質0円で設置する取り組みを始めました(東京ガスと静岡ガスのエリア限定)。顧客は太陽光発電の電力を自由に使えますが、余った電気は電力会社に売電され、売電収入を10年間、ガス会社に譲渡する契約を結びます。ガス会社は売電収入で得た資金で、太陽光発電システムの費用を回収するスキームです。

住友不動産と東京電力エナジーパートナー(EP)は2021年9月、住友不動産が施工する新築戸建住宅に太陽光発電と蓄電池を初期費用0円で導入し、月額利用料を徴収するサービスを始めました。ガス会社による同様のサービスが増えているため、24時間365日対応のコールセンターを設置し、設備が故障した際には迅速に修理・交換するアフターサービスで、差別化を図ろうとしています。こうしたサービスが広がることで太陽光発電が普及し、量産効果で太陽光パネルの価格が下がり、さらに太陽光発電設備を買いやすくなる好循環が生まれることが期待されています。

長く住み続けるという環境配慮

住宅での環境貢献は、何もエコな住宅を買う・建てることだけではありません。今、住んでいる住宅を長く住み続けることも環境にやさしい行動と言えます。

日本は一般的に、住宅を建てた後、20年でその住宅の価値は0円になると言われます。このため、欧州など海外に比べ短いサイクルでスクラップ&ビルド(解体して建てる)を繰り返し、新築を好む傾向にあります。しかし、解体すると廃棄物処理で環境に負荷がかかる上、新築時には新たに木材や鉄などの資源が必要になります。できるだけ長く住み続けることは、地球に優しい行為と言えます。

そこで、住宅業界は中古住宅を適正に評価し、市場に流通させる「優良ストック住宅推進協議会」(スムストック)を設立し、普及に努めています。同協議会では、築20年だからと即座に建物の価値を0円と試算するのではなく、構造躯体と耐用年数が異なる内装・設備を分けて査定し、丈夫な構造躯体の建物の価値を適正に評価して(値段を付けて)再販売につなげようと努めています。協議会は2008年に設立され、当初は鳴かず飛ばずの印象でしたが、政府の脱炭素化の動きや世界的な環境意識の高まりで、ここに来て活動に追い風が吹いているように感じます。これからの時代、住宅を購入する際には値段だけでなく、長く住み続けられるかどうかも重要なポイントになってきそうです。

 

文/松本麻木乃:専門紙記者
2004年、日刊工業新聞社入社。化学、食品業界、国際を担当、2020年から不動産・住宅・建材業界担当の傍らSDGsを取材。近著に「SDGsアクション<ターゲット実践>」(共著)。