menu

みんなの仏教SDGsウェブマガジン ReTACTION|みんなの仏教SDGsウェブマガジン

SDGs EYEs:LGBT、知る段階から理解する段階へ

自治体が同性カップルの関係を認めるパートナーシップ証明制度の広がりなどで、LGBT(性的少数者)が抱える課題に対する世間の関心は以前より高まっています。
2030年までに「誰一人取り残さない社会」を目指す国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、今後はLGBTを「知る」段階から、もう一歩踏み込んだ「理解する」段階にあると言えるでしょう。

LGBT、きちんと理解出来ていますか?

例えばトイレの問題。最近は大学をはじめ、大型の新築ビルには男女兼用の「オールジェンダートイレ」を設置し、LGBTに配慮する動きがあります。ある時、LGBTの専門家に言われました。「実はトイレの問題はLGBTのうち、Tに当たるトランスジェンダーだけが抱える問題です」と。レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)は「性的指向」を指すのに対し、トランスジェンダーは見た目と自認する性が異なる人を指します。L、G、Bの人々はトイレを普段通り使っており、トイレ問題を抱えていたのはTの人々だったのです。LGBTとひとくくりにしてそれぞれが抱える事情に無知だった自分をすごく恥じました。

Tの人々の中にも、見た目は男性だけど心は女性の人もいれば、今、ちょうど性別適合手術をしたばかりで男性から女性へ移行期間にある人、自分のことを男性でも女性でもない中性・無性と捉える人などさまざまです。こうした事情から、最近はLGBTの後にQuestioning(性的指向・性自認を模索中)のQを付け、「LGBTQ」と表記することも多くなっています。十把一絡げに物事を見ては重要な点を見落とす恐れがあると、いい教訓になりました。

LGBT総合研究所(東京都港区)の調査(有効回答者数34万7816人)によると、全国20~69歳のうち、LGBTに該当する人は10%存在するそうです※1。日本の人口で単純計算すると、約1200万人となり、これは東京都の人口(1300万人台)と規模感では同程度になります。最近は企業の間でもこれだけの人数がいるのなら、きちんと向き合う必要があると考えるようになっています。

※1:LGBT意識行動調査2019 https://lgbtri.co.jp/news/2410

拡がるLGBTに配慮した取り組み

東京ポートシティ竹芝のオールジェンダートイレ

服飾業のシーアールエー(千葉県佐倉市)は2021年6月、LGBT(性的少数者)の顧客専用のオーダースーツ専門店「ファブリックレインボー」を千葉県船橋市に開設しました。2時間単位の完全予約制でプライバシーに配慮している点が特徴です。全社員がLGBTの就職を支援するジョブレインボー(東京都渋谷区)の研修を受け、レインボー社が提供する「LGBTフレンドリー企業マニュアル」を読み込んで接客に当たっているそうです。

一般的にスーツは女性用と男性用で分かれており、例えば男性が女性用のスーツ専門店を訪れるのはハードルが高いです。「ファブリックレインボー」は特定の性に特化しておらず、誰でも利用できるところがいいです。完全予約制なので、店員が体の寸法を測っている際に、他の客に話を聞かれる心配がないところも魅力です。また意図的にさまざまな業種が入居する雑居ビル内に設置し、LGBT対象店舗に入ったところを見られてLGBTがばれる心配を避けている点もいいです※2。

※2:2021年6月1日、日刊工業新聞「オーダースーツ、LGBTに配慮、シーアールエーが専門店」

厚生労働省の性的マイノリティー調査(対象は労働者)によると、LGBTの5割以上が自分が性的マイノリティーであることを誰にも伝えていないと回答しています。接客業においては、LGBTのアウティング(秘密を暴露する行為)にならない細心の注意が必要と言えます。

LGBTを受け入れたいけれど、どう接していいのかわからないといった企業向けに研修事業を提供する会社も出てきています。不動産情報サイトのライフルはLGBTの住宅支援を行うアイリス(東京都新宿区)と連携し、不動産会社に特化したLGBT接客研修を始めました。例えば接客中に相手の配偶者の確認をする必要があるとき、性別を決めつけた言動をしないよう促しています。よくある例が、男性の入居者に対し、「奥様はいらっしゃいますか?」と聞くケース。店舗側に悪意はないのですが、ゲイの人にとっては失礼にあたり、パートナーに置き換えた方がいいそうです。

LGBTの理解者になるために、出来る役割を考える

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンは自社で実施してきたLGBT理解者育成研修を社外用にアレンジし、企業や団体向けに無償提供を始めました。すでに神戸市役所や上智大学が受講しています。研修では理解者の中にはLGBTへの差別的な発言を注意する「ストッパー」に加え、他の話題に変える「スイッチャー」、後から声がけしてフォローする「シェルター」、ハラスメントを人事などに報告する「リポーター」があると説明し、「あなたらしい理解者になれる」と教えるそうです。

この文章の冒頭で私はLGBTを「知る」段階から「理解する」段階へと指摘しました。個人的には理解するの方はより相手の立場になって物事を考え、さらに行動まで伴うものだと考えています。ストッパーになるのは難しくても、スイッチャーやシェルターから、理解者になってみませんか。

寄稿/松本麻木乃:専門紙記者
2004年、日刊工業新聞社入社。化学、食品業界、国際を担当、2020年から不動産・住宅・建材業界担当の傍らSDGsを取材。近著に「SDGsアクション<ターゲット実践>」(共著)。