浄土真宗の精神を建学の精神とする龍谷大学では、2019年に創立380年を迎え、周年事業の基本コンセプトに「自省利他」という行動哲学を掲げました。 その一環として、仏教の観点で持続可能な社会を考える「仏教SDGs」を推進しています。
仏教SDGsとは、SDGsの理念である“誰一人取り残さない”持続可能な社会の実現と、仏教における「摂取不捨」(全ての者をおさめとって見捨てない)という考え方を融合した、龍谷大学独自のアプローチです。本学では、これをもとに、学生に対し、地域社会の課題解決や利益提供を目的としたソーシャルビジネスに関する教育や起業支援を行っています。
2019年には、貧困層の自立を支援するソーシャルビジネスでノーベル平和賞を受賞した、ムハマド・ユヌス博士の協力のもと、ソーシャルビジネスの中核的な役割を担うユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター(以下、YSBRC)を設立しました。
ムハマド・ユヌス博士とは
YSBRCでは、ユヌス博士のソーシャルビジネスの知識と、本学を含め全世界にある84のユヌスソーシャルビジネスセンターのネットワークに加わることで、センター及び他機関からの様々なサポートを活かした教育活動を行っています。
ユヌス博士は、かつてアメリカの大学で教鞭をとっていました。しかし、祖国のバングラデシュがパキスタンから独立するのをきっかけに帰国したところ、自身のもつ経済学の知識では何の役にも立たないほどに深刻な貧困問題を目の当たりにし未経験で銀行を設立。
無担保で少額の資金を貸し出すマイクロ・クレジット(無担保小額融資)で農村部の貧しい人々の自立を支援する手法を全国で展開し、同国の貧困軽減に大きく貢献しました。
ユヌス博士は、こうした貧困層の自立支援活動が認められ、ノーベル平和賞(2006年)、アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞(1984年)をはじめこれまでに93の賞を受賞。ユヌス博士が設立したグラミン銀行は多分野でのソーシャルビジネスを展開し、「グラミン・ファミリー」と呼ばれる大きなグループへと成長をとげました。
ユヌス博士のこれまでの活動は、社会から取り残された人々を救い、“誰一人取り残さない”持続可能な社会の実現を体現しています。龍谷大学は、仏教SDGsの概念のもと、ユヌス博士との関係から得るソーシャルビジネスの知識やネットワークをもとに、学生に学びの機会を提供しているのです。
起業に挑戦できる多方面的な支援
龍谷大学では、これまでも学生が地域との関わりや社会活動に関心を持ち、卒業したあとも社会問題への課題解決意識を持ちながら、よりよい社会と自らの人生を創り出すことのできる人間に成長するためのプログラムを展開してきました。
その一つに、学生が学校の枠を越えて取り組むCBL(コミュニティベーストラーニング)があります。このプログラムでは、キャンパスが立地する京都、滋賀の学外団体、企業等と連携して授業を行うことで、学生と地域との交流の場を作っています。
京阪ホールディングスと連携した「京阪沿線活性化プロジェクト」や、うどんづくりを通じて地域住民と交流する「町家deうどん」などの地域連携プログラムの実施のほか、学生が積極的に社会活動に参加できるように活動に係る資金の支援なども行っています。
また、2020年度は、20年続く学生ベンチャー育成事業「プレゼン龍」と連携した「社会起業家育成プログラム」をYSBRCとして実施。SDGsの理念である“誰一人取り残さない”持続可能な社会の実現に向けて、社会問題を身近なところから考え、ビジネスの手法での解決を目指せる起業家の育成に取り組んでいます。
プログラムではユヌス博士をはじめ、数々のソーシャルビジネスを立ち上げてきた専門家等から直接レクチャーを受けることができ、起業方法やビジネス手法などを実践的に学べる内容になっています。
YSBRCでは、より多くの学生に、地域社会の活動に触れる機会を創出するだけでなく、実際に自ら進んで地域のためのビジネスを起こすことを支援しています。
ユヌス博士の精神、仏教SDGsの概念を踏まえたソーシャルビジネスが、地域社会のよりよい活性化に寄り添っていくことに期待しています。