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案内人は学生ボランティア。子ども向けの仕事体験プロジェクト「地域のおしごと博物館京都」

龍谷大学 ボランティア・NPO活動センターの紹介で、学生2名が子ども向けの仕事体験プロジェクト「地域のおしごと博物館京都」に参加しています。「地域のおしごと博物館京都」は、小学1〜6年生を対象にした1dayワークショップで、一般社団法人「未来コンシェルジュ」が運営しています。

今回は「地域のおしごと博物館京都」の取り組みと、学生が案内人ボランティアとして参加する意義について、「未来コンシェルジュ」代表理事の鈴木千鶴さんと学生2名にインタビューをしました。

企業や商店・学生・保護者・行政を巻き込む
地域創生プロジェクト

「未来コンシェルジュ」代表理事/鈴木千鶴さん

「『地域のおしごと博物館京都』を始めたのは2019年。私が自動車販売・整備の事業をおこなっている西京区からスタートし、2022年に一般社団法人を設立して組織化しました。2019年11月〜2023年10月の期間、京都市の12ヶ所で開催し、参加児童、引率保護者、受け入れ元、ボランティアを含めたのべ人数は1,068人となりました。寄付などの協賛をしてくれた企業は87社です。

『地域のおしごと博物館京都』は、小学1〜6年生を対象にしたワークショップです。拠点を設定し、そこから近い場所にある商店や企業で仕事体験をおこないます。開催当日は、子どもたちや保護者、高校生や大学生の案内人ボランティアがいったん拠点に集まります。体験場所ごとのチームでコミュニケーションをとった後に、案内人ボランティアの引率で開催場所に移動します。

ワークショップは、不動産店では[部屋の間取り図を書いてみよう]、電気店では[テレビを見るためのアンテナ工事体験]、生花店では[フラワーアレンジメント作り]など、大人もやってみたいと思える内容です。ワークショップが終了したら子どもたちが感想とお礼を伝え、案内人ボランティアとともに拠点に戻ります」。

「『地域のおしごと博物館京都』のコンセプトは“地育地生(ちいくちしょう)”。街は、住民との交流により活性化すると考えます。また、子どもたちに『やりがいのある仕事が、地域にある』と伝えることは、私たち大人の役目。未来を担う子どもたちに自分が輝ける働きがいのある仕事を見つけてほしい、地域にある中小企業や商店の魅力を知ってもらい、幸せに過ごせる未来へ案内したいという想いがあり、仕事体験を通じた地域創生を掲げています。住民が地域を育て、地域で生きるという幸せ作りのお手伝いをしています。

開催当日は、保護者による引率をお願いしています。子どもたちだけでなく、大人のみなさんにも地域の魅力を知ってほしいからです。体験を受け入れる中小企業や商店にとっては、住民への認知力が高まる効果が期待されます」。また開催後にアンケートに記入することで保護者として、次世代が働く社会の環境を考える機会を作っています。

現在、高校生・大学生のボランティアスタッフは25名。子どもたちと企業、商店をつなぐ「案内人」として活動していただいています。ボランティアは単発・継続とも歓迎しています。

案内人リーダーとして
企画立案・当日の進行を担当

「地域のおしごと博物館京都」案内人リーダー/辻 美咲さん(法学部/2年)

「高校在学中にコロナ禍となり、人とのつながりを制限される日が続きました。龍谷大学に入学し、人とのつながりを作るボランティアを探していたところ『地域のおしごと博物館京都』を知り、活動を始めました。

2023年10月は西京区桂駅エリアの6ヶ所でワークショップを開催しました。私が担当したのは接骨院です。子どもたちは受付レジでの予約受付や、施術者役と患者さん役の2人ペアでおこなうストレッチ体操を体験しました。準備段階では『違う学年の子ども同士がうまく話せるかな』と悩みましたが、私があれこれお膳立てするよりも子どもたちに任せようと決めました」

「当日の雑談タイムでは、上の学年の子が下級生に優しく話しかけるなどの気づかいがあり、子どもたちを信じてよかったなと感じました。また、最初はもじもじ恥ずかしそうにしていた子どもが、ワークショップが終わるころには自発的に発言するようになっていました。帰り際、保護者が『恥ずかしがり屋な子が積極的になっているなんて』と驚いていたことも印象深いです。後で聞いたのですが、ある女の子は『将来は整骨院の仕事をしたい』という夢ができ、ワークショップで習ったストレッチをお父さんにしてあげているそうです。『地域のおしごと博物館京都』の目標のひとつである『やりがいのある仕事を見つけてほしい』が、まさにぴったりハマった例で私も嬉しく思います。

私は滋賀県東近江市出身。地元にはお祭りやバザーでにぎわう商店街がありますが、私個人は商店の人たちとの交流はほとんどありません。ボランティアを始める前は地元が目に入っておらず、都会に憧れていました。京都で活動するうち、地元にもきっと事業承継など課題があるのだろうと想像力がはたらくようになりました。そして、卒業後は地域貢献ができる仕事もいいなと、公務員も視野に入れようと考えています。また、そもそも私はまとめ役についていくタイプでした。しかし案内人リーダーとなり、他の人たちをまとめて企画を進める面白さと、やりたいことを実現できる喜びを知りました」

地域活性の輪が広がれば
日本全国が元気になれる

「地域のおしごと博物館京都」案内人リーダー/三尾 彩乃さん(法学部/2年)

「私は子どもたちが大好き。塾講師のアルバイトをしていましたが、さまざまな地域の子どもたちと勉強以外の話をして交流したいと思い、『地域のおしごと博物館京都』のボランティアスタッフになりました」。

「私は2023年10月、北区開催の会に参加し、髪飾り製造業のショップを担当しました。子どもたちは2人1組でお客さま役、スタッフ役のペアになり、髪飾りのお見立てに挑戦しました。参加したのは、おしゃれに関心がある女の子たち。雑談タイムで『好きな色や柄は?』と聞きあったり、ワークショップでは『◯◯ちゃんはこの色が好きって話していたよね』『覚えていてくれていて嬉しい』と会話をしたりと、和気あいあいの雰囲気で進みました。

私は中学卒業までは長崎県の五島列島で過ごし、現在は兵庫県明石市で祖母と2人で暮らしています。明石は魚屋さんが多いのですが、年々お客さんが減っています。それまでは寂しいなと感じるだけだったのですが、案内人のボランティアを始めてから、京都の街にも明石にも特色があり、そしてそれぞれの課題があることがわかりました。

現在、案内人リーダーは辻さんと私、そして大谷大学の学生の女性3人です。私たち学生にとっては、中小企業の経営者からお話をお聞きしたり、さまざまなシーンで活躍している大人たちと交流したりできることが良い経験となっています。案内人リーダー同士では『地域のおしごと博物館の取り組みが全国に広がるといいね、そうすればきっと日本全体が活気づくよね』と話しています。

また、代表理事の鈴木さんは女性経営者であり、女性の社会進出についても考えるきっかけとなりました。世界で活躍するリーダーや学者は女性が多いのに、日本は少ないのが現状です。私たち案内人リーダーが、規模は小さいながらも女性活躍の例となればいいなと思っています」

ボランティアは
視野を広げる良い経験になる

「龍谷大学 ボランティア・NPO活動センターには、素晴らしい学生さんを紹介いただき感謝しています。辻さんも三尾さんも、案内人リーダーとして企画を考えて実行する力を持っており、活動を通して自身の喜びを見つけてくれています。ほかの学生スタッフからは『五感をフルに動かしながら、自主性を発揮できる経験ができている』という感想をいただいています。『地域のおしごと博物館京都』のボランティアは、大学やアルバイト先では体験できない経験ができるでしょう。経験は宝物です。大学生のみなさんには、何か興味があるボランティアに参加し、視野を広げる経験をしてほしいですね」(鈴木さん)