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龍谷大学×琉球大学×京都文教大学が連携し「ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」を開発

龍谷大学が代表校となり、琉球大学、京都文教大学との連携で進める「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」が、文部科学省 令和5年度「人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業」に、私立大学が代表となる唯一のプロジェクトとして採択されました。

本プロジェクトでは、リスキリングを目的とする社会人を主なターゲットとし、地域や社会課題の解決に寄与する高度な人材教育プログラムを構想しています。プログラム内容は、3大学院が政策学や経済・経営学、臨床心理学などの専門分野を持ち寄り、理論や分析法を学ぶオンライン講義と、京都または沖縄で実施するフィールドワークを予定。また、プログラム修了者を「ソーシャル・イノベーション人材」として資格認証する制度も開発・導入します。

2023年10月31日、龍谷大学にて行われた「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」が文部科学省に採択されたことを発表する記者向け説明会の模様をダイジェストでレポートします。
※敬称略

社会的利益と経済的利益を両立させる
“ソーシャル・イノベーション”を目指す

龍谷大学 学長/入澤崇

「さまざまな社会課題がますます深刻化している現在、大学および大学院の使命は、課題解決型社会の構築に向けて人材を育成することだと考えます。今、全国的に大学院の存在感が低下しつつあります。課題解決に向け、ひとつの大学院だけでアプローチをするという時代は終わりつつあります。本プログラムでは、志を同じくした大学院が相互に連携し合い、課題解決に向けた人を育成し、ソーシャル・イノベーションを起こすことを狙いとしています」

 

龍谷大学大学院 政策学研究科 研究科長/中森孝文

「私たちは、ソーシャル・イノベーションを『社会課題の解決に向けて課題の中からポテンシャルを見抜き、当該ポテンシャルと多様な知見を融合させて、新たな価値を創造すること』と定義しています。通常のイノベーションとの違いは、社会的利益と経済的利益を両立させることです。現在、脱炭素化、貧困、過疎、高齢化、障害者雇用問題など、科学技術のみでは解決できないさまざまな社会課題が山積しています。しかし、すべての社会課題解決にかける、国や地方自治体の財政的な力は十分だと言えません。

本プログラムでは、政策学や経済・経営学、臨床心理学など人文・社会科学系の知恵を融合させたアプローチにより新たな価値を生み出すことで課題解決に貢献する人材の育成をおこないます。また、学位の授与のみならず、一般財団法人・地域公共人材開発機構(COLPU)と連携してソーシャル・イノベーション人材の認証制度を開発・実施いたします」

 

 

中森「3つの大学院が連携して開発する教育プログラムでは、『社会課題の原因を多面的な視点から見抜く力』『多様な領域の知見を組み合わせて付加価値を生む力』を育てます。具体的には、多領域からのアプローチによるオンライン講座やワークショップを開催。フィールドワークから政策やビジネス案を提案し評価を受けるという流れです。

たとえば、古文書の修復・保存にかかる費用が不足しているという問題があるとしましょう。そこで調査をおこない、印刷関連企業と手を組み、古文書のレプリカを作成します。公共政策的アプローチからは、博物館に触れる古文書を展示することにより、小学校等の校外学習に活用することが考えられます。ソーシャル・イノベーション的アプローチからは、古文書のデジタルアーカイブを蓄積することで、デジタルコンテンツを使用したグッズ販売や映像貸し出しをおこない、収益を得るという方策を進めることができるでしょう。

龍谷大学ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンターでは社会課題の解決やESG経営を目指す企業に対し『ソーシャル企業(S認証企業)』として評価・認定する制度を実施しています。地域の金融機関が参画する『ソーシャル企業認証機構』により、2023年11月末で959件の企業を認証していますが、実はS認証企業の関係者を大学院に取り込めていないという課題がございます。今後は『ソーシャル企業』を認証してきている中で得た事例やネットワークを、3大学院との教育プログラムに活かしていきたいと考えています」

各大学院の知恵を掛け合わせ
地域課題の解決を狙う

琉球大学大学院 地域共創研究科 研究科長/本村真

「琉球大学では地域公共政策士を養成するため、PBL型の社会人向けキャリア形成プログラムを実施しています。2022年度終了時点で607名の受講者を輩出していますが、地域公共政策士・初級の履修生を大学院に取り込めていないという課題がございます。沖縄県内の課題は、オーバーツーリズム、島嶼(とうしょ)地域の課題、基地問題などがあります。現在は、福祉×観光、福祉×農業など、他分野との掛け合わせでイノベーティブを狙う取り組みがおこなわれていますが、今後は龍谷大学や京都文教大学と手を組むことにより、さまざまな掛け合わせの発想をもって地域課題に取り組むことができると見込んでいます」

 

琉球大学 地域連携推進機構 特命准教授/畑中寛

「琉球大学 地域連携推進機構では、沖縄県や市町村、高等教育機関、民間企業などが参加する『沖縄産学官協働人財育成円卓会議』の提言を踏まえ、令和元年度から地域公共政策士のプログラムをスタートしました。琉球大学が事務局を務め、既存の学問分野の科目を割り当てるというよりも、新たにプログラムを作り上げ、実践的な学びを重視しており、行政機関や民間企業、福祉団体で働く人、経営者、個人事業主などが学び、令和5年3月時点で99名の初級・地域公共政策士を輩出しました。本プログラムでは、これまで培ってきた地域公共政策学の実績を活かしていきたいと考えています」

心理学の知見を交え
新しい領域を開拓

京都文教大学大学院 臨床心理学研究科 研究科長/濱野清志

「京都文教大学は、臨床心理学研究において伝統的な箱庭療法や夢分析、芸術療法など非言語的なアプローチを中心とした教育と実践の歴史があります。私たちは長年、個人が自身の価値を発見するために、言葉以前の何かをつかみ出す作業に取り組んできました。

本学の大学院は臨床心理士・公認心理師の養成機関で、主に医療や教育、福祉現場に専門家を送り出しています。本プログラムでは、政策学や地域共生など幅広い分野の先生や院生との交流が刺激になり、新しい領域が開かれると期待しています。また、企業や自治体、経済団体など産業界に多面性、多様性のある心理職を送り込むことで、産業界が抱える問題の解決につながると考えます」

 

京都文教大学 産業メンタルヘルス研究所長/中島恵子

「京都文教大学『産業メンタルヘルス研究所』では、臨床心理学の知見を産業界で活かすための教育プログラムを開発しています。これまでの15年で、臨床心理士や公認心理師のほか、看護師、保健師、作業療法士など180名以上が修了しています。近年は、企業の経営者や管理職、人事総務担当者から心理学の知見を求められることも多いため、産業心理や経営、組織心理、神経心理といった講師を招いて講座もおこなっています。働く人たちをとりまくさまざまな問題は、個人のものだけではありません。組織や社会の課題を解決することにより、個人も社会も幸せになれるのではないでしょうか。研究所での、職種の違いを越えて学び合う環境やこれまでの取り組みを本プログラムに活かしたいと考えています」

プログラム修了者を
評価・認証する制度を開発・導入

一般財団法人 地域公共人材開発機構 専務理事/青山公三

「地域公共人材開発機構(COLPU)は京都の主要12大学が連携して設立した団体で、地域公共人材政策士育成プログラムの社会的認証を実施しています。現在は琉球大学など他地域の大学も参画しています。地域公共政策士は、産官学民の壁を越えて地域公共活動を主導する人材で、政治や行政、NPOや公的機関の関係者を対象とした地域公共政策人材を評価・認証しています。本件では、企業や金融機関など民間人を対象としたソーシャル・イノベーション人材に対して基準を設け、評価・認証する仕組みを支える役割を果たしたいと思います」

 

 

中森「今後は、ソーシャル・イノベーション人材の社会認知を高め、資格取得者の活躍ぶりを分析してプログラムの効果を検証します。また、資格取得者の交流組織『ソーシャル・イノベーション人材ネットワーク』を設置し人材バンク的な役割を担うことなどを通じて本取組の普及、浸透を狙います。これらは龍谷大学、琉球大学、京都文教大学と関係団体がこれまで続けてきた社会課題の解決に向けた取り組みと同じく、地道な活動の積み重ねによって成り立つものです。

社会課題は、過疎、貧困、環境問題、事業承継など複雑化・多様化しています。本プロジェクトを他地域や他大学にも開放し、さまざまな地域で広く展開されることで、イノベーティブな発想をもつ人材が増えると考えます。新たな価値が地域に広がることで、社会的にも経済的にも変革を起こすことができるでしょう」