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みんなの仏教SDGsウェブマガジン ReTACTION|みんなの仏教SDGsウェブマガジン

学生も教職員も安心して語り合える
平等で公平なキャンパスをめざして

龍谷大学では「誰一人取り残さない」という世界共通の目標SDGsに、仏教の思想に根ざした「仏教SDGs」を掲げ、多様性を認め合う教育と研究を進めています。

また、2万人を超える学生や教職員をはじめ、さまざまな関係者によって構成される龍谷大学は、人種、民族、国籍、信条、社会的立場、年齢、性別、性的指向や性自認、障がいの有無など、多様な人が自由に学び、働き、行動し、交流しています。差別や人権侵害を克服し、誰もが個性や能力を発揮して共存できる社会のために、大学から意識改革をしていくことは非常に大切なことです。

誰もが安心して過ごすことができるキャンパスづくり

龍谷大学では、「本学に関わるすべての人が差別やハラスメントなどの人権侵害を受けることなく学び、働き、関わり合えることを保障する」という人権に関する基本方針を掲げています。

さらに2021年には「性のあり方の多様性に関する基本指針」を策定。「性的指向や性自認など、性のあり方は多様であり、これらに関する差別や偏見を解消し誰もが自分らしく安心して過ごすことができる大学や社会を目指すことは、すべての本学構成員が取り組むべき課題」と明記。「トイレや更衣室等の利用にあたり、戸籍上の性別等にかかわらず性自認にしたがって自らが選択できるよう、環境整備と理解の醸成を図る」ことも明文化しています。学生や教職員、教育に関係するすべての人の声に耳を傾けながら、誰もが安心して過ごすことができるキャンパスづくりに努めています。

ありのままを認め、受け入れるそんな教育の場であるために

性のあり方には、身体の性以外にもさまざまな要素があります。自分が認識している性別、服装やふるまいなどの性表現、恋愛感情や性的な関心がどの性別に向いているかを示す性的指向などがあり、これらの要素の組み合わせは多様なことから「性のあり方はグラデーション」と言われることもあります。

ある調査によるとLGBT(L=レズビアン/自分を女性と自認し女性を好きになる人、G=ゲイ/自分を男性と自認し男性を好きになる人、B=バイセクシャル/女性を好きになることも男性を好きになることもある人、T=トランスジェンダー/出生届に記載された性別とは異なるアイデンティティを持つ人、の頭文字をとった言葉)を含む性的少数者の数は、日本の人口の5〜8%。

2017年に龍谷大学内で行ったアンケートでは、任意に回答した学生、教職員858人のうち、性的少数者だと自認している人が130人という結果でした。さらに少数者130人のうち「誰にもカミングアウトしていない」と答えた人は44.6%。半数近い人たちが、自分の性のあり方を表明せずに過ごしています。カミングアウトするという選択をした人が、偏見や差別に晒されないような環境を醸成し、知らず知らずのうちに相手を傷つけることがないよう、大学では多角的な取り組みを進めています。

環境整備のための取り組みとしては「だれでもトイレ」や「性別表記の廃止」が挙げられます。龍谷大学では男女別のトイレとは別に、性別に関係なく利用できる「だれでもトイレ」を70カ所に設置。また、大学内に設置されている証明書自動発行機から発行する証明書や申請書などには性別の記載がなく、各授業における受講者名簿にも性別の記載はありません。

さらに性的指向や性自認で困っている状況があるけれど、友人や家族といった身近な人に相談しづらい。そんな人たちをサポートする取り組みとして「ジェンダー・セクシュアリティ相談(GS相談)」を開設。相談の日程や場所を調整の上、教職員の相談員が相談に応じます。龍谷大学の学生と教職員であれば、自分自身のことだけでなくても相談可能。困っている友人のことや、相談を受けた場合の対応方法などについて、気軽に話すことができます。

当事者の悩みや卒業生の経験談をまとめた「LGBTQサバイバルブック」

大学生活のその後、社会の中で性的少数者がどのようなキャリアを築いているのか、十分な情報がありません。そのため、大学生の当事者の中には、卒業後のビジョンを描くことが難しく、不安に思っている人も少なくありません。このことから、就職活動やキャリア形成、パートナーとの関係、同じ悩みを抱えている人たちのリアルな言葉や情報を伝えることを目的に、2017年から「大学生のためのLGBTQサバイバルブック」を刊行しています。

※ LGBTQのQ(クエスチョング、クィア)とは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)のどこにも当てはまらない人や、自分の性のあり方をはっきり決められない、決めたくない、わからない人などの総称。

最初に刊行されたVol.1『先輩たちのライフストーリーズ』のテーマは就職。LGBTQを自認する卒業生によるキャリアセミナーでの講演録と寄稿文を冊子にまとめています。龍谷大学の卒業生で当事者でもある竹内あすかさんが、スーツの選び方や職場でカミングアウトすべきかなどを後輩たちに向けて話したキャリアセミナー「LGBTQと就職活動~LGBTQの当事者が語る仕事との向き合い方~」の講演録に加え、その他の卒業生の寄稿文が記されています。

2019年3月には「大学生のためのLGBTQサバイバルブック」vol.2となる『それぞれの結婚のカタチ』を刊行。同姓カップルが結婚に何を求めるのか、実際にアメリカで結婚している卒業生を含む2組の夫夫を尋ね、それぞれの結婚のカタチを詳しく紹介しました。前号を刊行後、英語でも読みたいとの声が多数あり、後半に英語での文章が併記されています。

2019年10月に刊行したVol.3『みんなのキモチ』は、学生や学生と縁のある方が参加し、社会について、ダイバーシティについて…さまざまな視点から寄稿文を寄せてくださいました。

vol.2『それぞれの結婚のカタチ』、Vol.3『みんなのキモチ』はホームページからPDF版をダウンロードできます。

すべての人に共通する話題として気楽に語り合う「SOGIカフェ」

SOGIとは、恋愛感情や性的な関心がどの性別に向いているかを示す性的指向(Sexual Orientation)と、自分が認識している性別(Gender Identity)を表す言葉。LGBTなどの性的少数者も、異性愛者の多数派も、すべての人が持っているものです。あまりにも多様で奥が深いSOGI。いろんな人の心にいろんな思いがあることを気軽に語らう茶話会「SOGIカフェ」を学期に1回のペースで開催しています。

「カミングアウトについて」「ステレオタイプについて」「自分らしさについて」など毎回テーマを決め、リラックスしながらみんなで語り合います。参加者のジェンダーやセクシュアリティは問いませんし、話したくなければ、黙って聞いているだけでもいい、途中参加や途中退出も自由です。参加者同士がありのままを尊重し合い、考えをシェアできる場を提供しています。

誰かを無意識に傷つけないよう学びを深めてつながり合う

偏見を恐れてカミングアウトをしないという選択をしている人もいるでしょう。それは普段から親しくしている人や大切だと思っている人かもしれません。一人ひとりの顔や性格が異なるように、性のあり方も千差万別。誰ひとりとして、まったく同じ性のあり方という人はいないのかもしれません。

ふつうじゃない、○○らしくない、というような、何気ない言葉で誰かを傷つけることをマイクロアグレッションといいます。良かれと思って発言したことが相手には大きな負担となり、時には命にかかわることもあるのです。龍谷大学の性の多様性に関する取組は緒に就いたばかりでまだまだ課題は山積しています。一人ひとりが気づく、気づいたときに行動する、みんなで学びあいつながりあって、誰ひとり取り残さない社会に向けた取り組みを進めていきます。